広報オペレーション(白瀬氷河編)

昭和基地から南西におよそ150km離れた場所に、白瀬氷河と呼ばれる氷河があります。全長約85kmにも及ぶ、非常に大きな氷河です。1月22日、65次と66次の広報隊員による合同オペレーションとして、白瀬氷河の偵察に向かいました。

ヘリコプターから見下ろす白瀬氷河。あまりの広大さに、解説してもらって初めてこれが白瀬氷河だと気が付く
撮影:JARE65 山岡麻奈美(2025年1月22日)

この白瀬氷河は南極で最大級の流動速度をもつと言われているそうで、直近の観測データでは、下流において年に2km流れていることが確認されているといいます。

氷が崩れ落ちた白瀬氷河
撮影:JARE65 山岡麻奈美(2025年1月22日)

南極の氷が全て融けると、全球の海水面が約60m上昇すると言われています。日本にいるときには現実味が沸かない話でしたが、南極で見渡す限りの氷河を目の前にして、融解が進めばかなりの水量になるよな、地球規模で大きな影響が出るよな…と身近なこととして実感しました。

66次夏期間は、経験者の方から「今年は積雪量が少ない」「今年は暖かい」等の言葉をよく聞きました。南極初参加の私としては、「確かに昨年よりは暖かい気がするけど、それは越冬を経験して寒さに慣れたせいではないか」と思っていました。しかし気象隊員に尋ねてみると、2024年12月26日、昭和基地で最高気温9.3℃を記録していたようです。昭和基地で最高気温9.0℃以上を観測するのは、1979年12月20日に9.4℃を観測して以来、45年ぶりのことです。

統計的なデータを並べてみると、確かに今年の昭和基地周辺は暖かかったのかもしれません。今年の気候が地球温暖化と関係があるかどうかまでは分かりませんが、昭和基地周辺の氷河が融けて流れ出る様子を眺め、地球温暖化をはじめとする環境問題を、身近なものとして考えることができました。

(JARE65 山岡麻奈美)

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