現在、東経114度を南下中です

フリーマントルを出港した翌日(12月1日)の朝、「しらせ」はもう見渡す限りの大海原の中にぽつんと1隻だけの存在となっていました。「しらせ」は東経114度線に沿って時速30km弱の速度でどんどん南下し、現地時刻の18時17分、フリーマントル港から約800km離れた南緯39度付近まで到達しています(観測隊はいまどこ?)。本来なら、東経110度線を途中停船して定点観測を行いながら南下する予定でしたが、西から接近してくる低気圧の影響で高いうねりが予想されたためやむを得ず、やや東寄りの航路で南下することとなったのです。「しらせ」の行く先にいったいどれくらいの大きなうねりが待ち受けているのか、不謹慎なことに楽しみにしている広報隊員です。

そんな今朝、まだ雲行きが悪くなることが予想できないくらいの快晴で35ノット(秒速約18m)の強風が吹き抜ける甲板上をウォーキング※1していたのですが、同じく少し前をウォーキングしていた調理担当の小笠原隊員が甲板上の何かに気づいて拾いました。「何かあったの?」と尋ねると見せてくれたのがこちら

これはなんだろう?
撮影:JARE65 丹保俊哉(2023年12月1日)

小笠原隊員は「種?」と予想し、広報隊員は「火山豆石(軽石)※2かも?」と。少なくとも魚類の卵ではなさそうです。どうやらうねりが砕波した際に強風で舞い上がって、甲板に飛び乗ったようです。正体を知るため人材のるつぼである観測隊に艦内メールで画像をみてもらいました。すると足立隊員から「割ってみましょう」との助け舟が。作業をお願いして割ってもらうと

足立隊員に割ってもらい断面を観察してみると、中には種子のような構造が現れました。
撮影:JARE65 丹保俊哉(2023年12月1日)

どうやら植物の種のようだという結論になりましたが、何の植物かまでは分かりませんでした。この種子のようなものたちがどこからどんな形でここまで来たのか、ちゃんと発芽できるのかも不明ですが、船影も島影もみえない大海原で気が遠くなるような大航海をしてきたのだと一人妄想していると酔い止めの薬の副作用か、いつの間にか本当に気が遠くなって椅子に座ったまま居眠りをしていました。

波浪による船の動揺はまだまだ序の口のようですが、強風によって舞い上がっているのは波間に浮かぶ種子のようなものだけでなく、海水も舞い上がって横殴りに船体を濡らしていて、船舶チームが艦橋上の06甲板に設置している飛沫センサーでも既に検出されている程です。もっともセンサーの記録を見ずとも、それを体感することができたのがこちら。

05甲板の外階段の手すりを握りながら滑らせて降りるとこうなりました。
撮影:JARE65 丹保俊哉(2023年12月1日)

この後、揺れが本格化してダウンしてしまうかもしれず、その前に少しでも観測隊の様子をお伝えしたかった広報隊員でした。

今日は楽しみにしていたカレーライスの日、初日でした!口に入れたときはチキンの旨味と溶けた玉ねぎの甘味が程よく、後からピリッと辛味が主張する特徴です。なぜ2杯あるのかって?美味しいからに決まってるじゃないですか。
撮影:JARE65 丹保俊哉(2023年12月1日)

8字航行による磁力計のキャリブレーション

南緯約40度にて現地時間22:00から行われた、8の字航行による磁力計のキャリブレーションの航跡図です。時速約8ノット(時速約15km)の速度でゆっくりと、左回り、右回りして全体として1.5kmの8の字を描いた後に再び東経114度線上を南下します。こうした8の字航行を時々繰り返し「しらせ」は昭和基地を目指します。8の字航行についてはこちらでご確認ください。

8の字航行:動画

(JARE65 丹保 俊哉)

※1 ウォーキング...狭い艦内生活で体力と健康を維持するため、全通甲板にてランニングやウォーキングなどを行う「艦上体育」が6時から日没までの時間帯で許可されています。飛行甲板でサッカーボールのパス回しや野球のキャッチボールを行う隊員も。

※2 豆石...直径数ミリ〜数センチの礫で、しばしば火山噴出物として形作られる石です。