昭和基地のネットワーク

昭和基地主要部の建物から東側を眺めると2つの黒いドームが見えます。多目的アンテナレドームとインテルサットレドームです。アンテナを自然環境から保護するためのドーム型の設備をレドームと言い、両レドームの内部にはパラボラアンテナが設置されています。多目的アンテナレドーム内の大型衛星受信アンテナの役割は観測隊ブログ記事「遠くの天体の電波で地球を観測」で紹介しました。今回は、もうひとつインテルサットアンテナの役割と昭和基地のネットワークを紹介します。

基地主要部の管理棟から東側の眺め
撮影:JARE64 白野亜実(2023年4月5日)
基地の北側の北の浦に面した露岩帯に建つインテルサットレドーム
撮影:JARE64 白野亜実(2023年4月3日)

インテルサットレドーム内には直径7.6mの大型パラボラアンテナがあり、インテルサット衛星と日本国内の地球局を介した衛星通信回線が国立極地研究所と常時接続されており、昭和基地は世界中のネットワークに繋がっています。この衛星通信回線により、昭和基地で得られた観測データが国内に常時伝送されています。昭和基地内に張り巡らされたネットワーク(ローカルエリアネットワーク=LAN)を通じて、観測機器や基地設備の監視が行われており、安定したネットワーク接続で観測隊の活動を支えています。

インテルサットレドーム内の大型パラボラアンテナ
撮影:JARE64 白野亜実(2023年4月3日)
LAN・インテルサット隊員による保守作業 設備に異常がないか入念に確認する
撮影:JARE64 白野亜実(2023年4月3日)
インテルサットレドーム横の制御室内 通信状況の監視を行う
撮影:JARE64 白野亜実(2023年4月3日)
南極・昭和基地から通信衛星回線を通じたインターネット通信のイメージ
作成:JARE64 中村映文、白野亜実

2004年にインテルサット衛星通信設備が設置され、昭和基地からインターネットの利用が可能となりました。以降、LAN・インテルサット担当隊員を中心として昭和基地のインターネット環境の整備と保守管理が続けられてきました。業務のみならず、隊員がその家族や友人とメールのやりとりを通じてコミュニケーションを図るなどネットワークは多くの役割を担っています。64次隊のLAN・インテルサット担当の中村隊員に話を伺いました。「昭和基地のインターネットは、観測データの常時伝送を担っているだけではなく、隊員がご家族とメールのやりとりによって心の支えになっていたり、遠隔医療相談によって隊員の生命や健康を守る役割を担っていたりします。これらの幅広い役割を常に念頭におき、通信が途絶えることがないよう、保守管理にあたっています。無線が好きで通信の仕事に就きましたので、アンテナや無線機の点検をしているときが楽しいです。同僚が機器の通信設定に困っている際に、うまくサポートできたときも、やりがいを感じます。」

日頃、日本にいるときと同じように、昭和基地でも常時インターネットが利用できて当たり前に考えてしまいがちですが、LAN・インテルサット担当隊員による、たゆまぬ努力により安定して利用ができることに感謝したいと思いました。

(JARE64 白野亜実)