遠くの天体の電波で地球を観測

2月15日の昭和時間21:00(日本時間16日03:00)から24時間、大型衛星受信アンテナによるVLBI(Very Long Baseline Interferometry:超長基線電波干渉法)観測を行いました。

アンテナは高さ17mの黒いレドーム内にあり基地内でも存在感ある建屋の1つ
撮影:JARE64 白野亜実(2023年2月14日)

VLBI観測とは、数十億光年の彼方にある天体からの電波を地球上の複数のアンテナで同時に受信して、アンテナ間の正確な距離を求める観測です。63次隊からの引継ぎを経て、今回初めて64次の隊員だけで観測を実施しました。

アンテナに指示を送る装置が設置されている衛星受信棟でVLBI観測を実施中の隊員たち
撮影:JARE64 白野亜実(2023年2月15日)

直径11mのパラボラアンテナで、天体から発せられる電波を受信
撮影:JARE64 白野亜実(2023215日)

この観測は、地球の形や姿勢を精密に決めるため、IVS(International VLBI Service for Geodesy & Astrometry:国際 VLBI 事業)の主導のもと、国際的な VLBI 共同観測として実施されています。現在、世界中で30箇所以上のVLBI局がIVS観測に参加しています。VLBI観測は、私たちが普段使用しているGoogle Mapなどの地理情報システムや海面上昇などの地球環境変動の監視の基準となる国際地球基準座標系の構築にも役立てられています。観測隊では、1998年から昭和基地において定常的にVLBI観測を行い、データ取得を継続するとともに、北半球に比べ観測局の数がかなり少ない南半球において国際VLBI観測に貢献しています。

国際 VLBI 事業に参加する世界各地のVLBI局
作成:JARE64 青山雄一、白野亜実

モニタリング観測担当隊員と多目的アンテナ担当隊員の協働により、無事24時間の連続観測を終えることができました。VLBI観測担当の瓢子隊員は今回の観測を終えて「64次の隊員のみで行う初めてのVLBI観測だったので無事に終わってホッとしました。初心を忘れずに1年間観測を続けていきたいです。」と話してくれました。

私は今回初めてVLBI観測の現場を取材しましたが、観測隊によって20年以上に渡り、南極で宇宙から地球を捉える、大きなスケールの観測を続けていることをとても誇らしく思いました。また、宇宙と地球のつながりを実感できる瞬間でもありました。今の時期まだ深夜でも空は薄明るく、星はあまり見えませんが、きっと極夜の頃には満天の星が現れるのだろうとこれから迎える冬が楽しみです。

(JARE64 白野亜実)