海底圧力計の揚収

南極地域観測隊は、毎年リュツォ・ホルム湾沖の定点(南緯66度50分、東経37度50分)で、海底圧力計の投入と揚収  の作業を実施しています。海水面の経年変動(長期変動)や外洋域での季節変動を表す海底圧力の連続時間変化データを取得するためです。海底圧力計は1台につき2年間継続して観測をします。64次隊は、62次隊が投入した海底圧力計の揚収を2月18日に行いました。

海底圧力計は水深約4,500mという深海に投入されるため、揚収の際には投入した位置を知ることが重要となります。音響によりスリープ状態から起動後、信号を送信して鉄骨の重りと計器(オレンジ色の球形プラスチック容器の中のガラス玉に入れた海底圧力計など一式)の切り離しを行います。海底圧力計が海面まで浮上するのに約90分の時間がかかります。

約4,500mの海底に沈む海底圧力計を揚収するために、音響測位を行い機器の位置を確かめる隊員
撮影:JARE64 山口真一(2023年2月18日)

ある程度の位置は把握されてはいるものの、揚収の際には浮上した海底圧力計を目視で探す必要があり「しらせ」艦橋からできるだけ大勢の人の目で探します。

「しらせ」艦橋にて、「しらせ」乗員と観測隊員が一丸となって海底圧力計を探す
撮影:JARE64 山口真一(2023年2月18日)

海底圧力計を発見。画像の真ん中に浮かんでいるのが分かりますか?
撮影:JARE64 山口真一(2023年2月18日)

船を近づけ、四ツ爪を使って引き揚げます
撮影:JARE64 山口真一(2023年2月18日)

この作業を担当した村上隊員は「昨年(63次)は投入も揚収も実施することができず非常に悔しい思いをしたので、今年は両方成功させることができて安堵している。今日、沢山の「しらせ」乗員、観測隊員が艦橋で捜索に協力してくれている姿が目に入り嬉しく、心強く感じた。感謝している。」と語りました。

無事に揚収することができました
撮影:JARE64 山口真一(2023年2月18日)

海底圧力計による定点連続観測データは、測地衛星による重力測定の地上検証データとしても使用されるとともに、長期観測データとして潮汐解析等の研究でも使われます。また、短期的な変動は大気循環や海洋循環と密接に関わるためこれらとの比較に使用され、遠地の巨大地震に伴う地震波や津波が検出されることもあります。

(JARE64 山口真一)