引き続きトッテン氷河沖で海洋観測中です。朝の気温はマイナス11℃。とても冷え込んでいます。
今日は、昭和基地に向かう途中の2019年12月15日と17日に海底に設置した2つの係留系を回収する計画です。これらの係留系は南極の夏の間、トッテン氷河沖で海水温、塩分を測定し続けていました。復路でトッテン氷河沖に到着した2月中旬、係留系の設置点は海氷で覆われ、とても回収できるような状況ではありませんでしたが、観測スケジュールを調整しつつタイミングを伺っていたところ、狙い通りに海氷が流され、水開き(みずあき。海氷のない部分)ができたのでした。待ちに待った回収です。
午前9時ごろ、昨年12月17日に投入した約400メートルの係留系の設置ポイントに到着。ケープダンレーで係留系を回収したときと同じように、トランスデューサーという機器を海に吊り下げて、音波で係留系に信号を送ります。
係留系からも音波で返答があり、生存を確認できました。続いて、「錘(おもり)を切り離し、浮かんでくるように」と指示する信号を送りました。しかし、30分ほど繰り返しても切り離し完了の返答信号が確認できず、今日はこの係留系の回収は断念しました。
午後は、12月15日に設置した約200メートルの係留系の回収に向かいました。隊員がトランスデューサーで切り離し信号を送ると、ピーーーッとやや長めの返答信号が。「これ、切れたっぽくない?」。確認のため、音波信号を繰り返し送りました。その時「浮上!あった!」という声が。海を見ると、係留系の赤いフロートが水面に浮いています!甲板では「おお~」という安堵の声とともに拍手が起こりました。
見つけたら次は回収です。今航海で係留系などの回収はもう3回目。「しらせ」乗員の皆さんも慣れたものです。係留系の近くまで「しらせ」が進み、乗員の方々が紐の付いたヨツメ(フックが4つ集まったような形の道具)を海に投げました。位置がやや遠く、係留系まで届かないかと思われましたが、さすがいつも鍛えている自衛隊員、3回目の投てきで係留系のロープにヨツメを引っ掛けました。
引っ掛けた係留系を、ロープを手繰り寄せて船尾まで移動させ、観測甲板のクレーンを使って引き揚げます。係留系の上端部を船内に回収したところで問題発生。どうやら、係留系が流されるうちに「しらせ」の下を通ってしまい、船底の凸部か何かにひっかかっているようです。係留系のロープ部分がプロペラに絡んだりしたら一大事です。
急遽、係留系を手繰り寄せて、船首側の周囲にぐるっと回し、ひっかかりを解くことになりました。
なんとか引っかかりが解け、最終的にはクレーンを使わず、人力で係留系を引き上げました。冷や冷やしましたが回収成功です!明日は新たな係留系を設置する予定です。
(JARE61 寺村たから)