極地で出会う現象

南極では、私たちが普段暮らしている地域ではめったに見られない現象に出会うことができます。ここではそれらの一部を紹介します。

【細氷・ダイヤモンドダスト】

細氷(さいひょう)は、極めて低温の環境下で空気中の水蒸気が凍ってできた非常に細かい氷の粒が、空から静かに降る現象です。ダイヤモンドダストとも呼ばれています。日射がある場合にはこの結晶で光が反射・屈折するため、ハロやサンピラー(太陽柱)などの大気光学現象が見られることも多々あります。日本国内の寒冷地でも見ることができますが、南極の環境は、より発現条件が揃いやすくなっています。

太陽の周りで光輝く細氷と垂直方向へ帯状に伸びるサンピラー
撮影:JARE67 阪本実紀(2026年5月5日)

【幻日・幻月】

幻日は、大気中にある氷の結晶で光が屈折し、太陽の左右に虹色の光のスポットが見える現象で、太陽の高度が低く、空の高い所に薄い雲が出ている場合などに見られます。太陽ではなく月の左右にできることもあり、この場合は幻月と呼ばれます。太陽に比べると月の光はずっと弱いため、人が暮らす街中では幻月はほとんど見ることができません。人為的な光のない南極では条件がそろえば見ることができます。

月の左右に明るく輝く幻月
撮影:JARE67 阪本実紀(2026年3月29日)

【地ふぶき】

地ふぶきは、地面に積もった雪が風に巻き上げられる現象です。気象部門では、観測者の目線より高いところまで巻き上がる「高い地ふぶき」と目線より低い巻き上がりの「低い地ふぶき」の2種類に分けて観測しています。前者はブリザード時に急激な視程障害を引き起こすなど、南極での活動において脅威になりうる現象です。後者の低い地ふぶきはブリザードの初期・終期など比較的風の弱い時に見られます。動画は低い地ふぶきの例で雪面の起伏に沿って流れる様が雲海のようで見ごたえがあります。

雪面を這うように流れる地ふぶき
撮影:JARE67 阪本実紀(2026年9月24日)

【ハイドロリックジャンプ】
南極大陸はドーム状の形をしているため、標高の高い内陸部から重く冷たい空気が裾野に向かって流れ出し、その風が大陸の端で大きく乱れることがあります。これが、ハイドロリックジャンプと呼ばれるもので、跳ね上がる空気に雪や氷の結晶が混ざると白い煙が立ち上っているような様子が見られます。

南極大陸の麓でハイドロリックジャンプにより巻き上がる雪煙
撮影:JARE67 阪本実紀(2026年9月20日)

【オゾンホール】

オゾンホールとは、成層圏にあるオゾンが南極上空で極端に少なくなる現象で、南極上空で8月から9月頃に発生して急速に発達し、11月から12月頃に消滅します。昭和基地では、オゾンゾンデ観測とオゾン全量観測を実施しており、オゾンホールの状態を観測しています。気象庁では、上空のオゾンの総量を表すオゾン全量が220m atm-cm以下の領域をオゾンホールの広がりの目安としており、今年2026年のオゾンホールは、8月中旬頃に南極上空に発生し、9月上旬には最近10年で最大程度の面積となっています。オゾンホール関連情報はこちらをご覧ください。

▶オゾンホール関連情報はこちら
 参考1:観測隊ブログ(JARE67)極地で出会う雲
 参考2:気象庁HP  南極オゾンホールの状況(2026年)

オゾン全量観測装置(ブリューワー分光光度計)
撮影:JARE67 阪本実紀(2026年2月2日)

【お湯花火】

最後に、自然現象というわけではありませんが南極ならではの遊びもご紹介します。非常に気温が下がった環境で、お湯を撒くと写真のように一瞬にして白い霧が花火のように広がります。低温下では空気中に含むことのできる水分量が少ないため、お湯から出た水蒸気がすぐさま氷の結晶となり、このように見えています。これを私たちは「お湯花火」と呼んでいます。

水筒に入れたお湯を空に撒いた様子
撮影:JARE67 大西祐喜(2026年9月10日)

ここで紹介したものの他にも南極の環境では様々な現象が見られます。自然の美しさ、厳しさ、面白さを感じます。

(JARE67 阪本実紀)