極地で出会う雲

極夜開始からほどなくの6月5日、昭和基地では極域成層圏雲(きょくいきせいそうけんうん)が観測されました。私たちが普段目にする雲は、対流圏という地表から10km程度までの高さに位置し、その上の成層圏では通常、雲は発生しません。しかしながら、冬の極域では成層圏が非常に低温(-78℃以下)となり、わずかに含まれる水蒸気や硝酸から雲が形成されます。この雲が極域成層圏雲です。極域成層圏雲が出現している間に実施された高層気象観測の結果から上空の気温を確認すると、およそ16kmから27kmの高さで-78℃を下回り、高度約22kmでは最低気温となる-86.8℃でした。今回出現した高度は、雲の仰角と水平線下の太陽までの俯角から推定して、高度20km前後に位置し、高層気象観測で低温を示した高さとちょうど対応していました。

桃色に輝く極域成層圏雲
撮影:JARE67 阪本実紀(2026年6月5日)

極域成層圏雲は、見た目には美しい雲ですが、春季にオゾン層の破壊を引き起こします。これは、人為起源のフロンからできた化合物を蓄えており、この化合物から生じた塩素分子が極夜が明けて太陽光が当たると塩素原子となりオゾンを壊してしまうためです。昭和基地では、1982年にオゾンホールによるオゾンの急減を世界に先駆けて観測しました。今でもオゾン層の観測を継続して行っており、こういった綺麗な景色だけでなく、環境に与える影響にも引き続き目を向けていきいと思います。

極域成層圏雲に臨むオゾン全量観測装置(ブリューワー分光光度計)
撮影:JARE67 阪本実紀(2026年6月5日)

(JARE67 阪本実紀)