新たに南極で運用するクローラーシステムの取付試験

雪上車とは、タイヤではなく幅広の履帯(クローラー)を備え、積雪や凍結路面上を安定して走行する特殊自動車です。幅広のクローラーにより設置圧を低く抑えることで、深い雪や柔らかい氷上でも車体が沈みにくくなり、悪天候下でも比較的安全に移動できます。南極では、 南極観測船「しらせ」と昭和基地間の氷上輸送や、内陸のドームふじへの移動などに従来から広く用いられてきました。

▶参考:観測隊ブログ (JARE63) : 雪上車講習(その1)

68次隊では、従来の専用車両とは異なる新しい方式の雪上車を実験します。従来型は最初からクローラーを装備した専用車両が主流でしたが、本実験では一般的なピックアップトラックに後付けのクローラーシステムを装着することで、既存の車両を雪上走行に対応させる方式を試行します。こうした方式は、移動機材の汎用性向上や整備・運用コストの低減につながる可能性があります。

納品されたクローラーシステム(左)とクローラーシステムをチェックする隊員(右)
撮影:JARE68 矢吹裕伯(2026年9月30日)

新システムの取付試験は9月30日に実施され、車両隊員が昭和基地に既に持ち込まれているものと同型のピックアップトラックを用いて作業を行いました。まず車両側にクローラーシステムを取り付けるための専用機器を装着し、その後クローラー本体をタイヤに取り付けていきます。取り付け作業では、車体とクローラーシステムの固定を確実に行うことが重要であり、固定用のボルトやブラケットの締め付け、取り付け位置の確認、可動部のクリアランス確認などを丁寧に実施しました。

クローラーシステを取り付ける車体側の準備を行う隊員
撮影:JARE68 矢吹裕伯(2026年9月30日)
クローラーシステの取り付け作業
撮影:JARE68 矢吹裕伯(2026年9月30日)

装着後は極地研敷地内で試走し、基本的な走行・操舵の状態や、取り付け部の状態を確認しました。

クローラーシステムを取り付けたピックアップトラック
撮影:JARE68 矢吹裕伯(2026年10月2日)

従来の雪上車が時速約10km程度の移動に限られていたのに対し、本方式では時速約30km程度での走行が可能になるとのことです。ただし、実運用にあたっては耐久性試験、長距離走行時の燃費や機械的負荷、整備性、安全対策(脱輪や外れの防止策)など、追加の検証が必要と考えられます。

68次隊では、耐久試験や実地運用試験を重ねることで、クローラーシステムを取り付けたピックアップトラックの安定運用を目指します。汎用車両を活用できれば、輸送能力の柔軟化や補給効率の向上が期待され、南極での活動範囲拡大や緊急対応力の強化にも寄与する可能性があります。

(JARE68 矢吹裕伯)