雪上車講習(その1)

先日SNSでお伝えした南極安全講習の一環として、車両隊員による雪上車講習が行われました。
一口に雪上車といっても用途によって複数の車種が使用されています。今回は、現在昭和基地にある雪上車6車種をご紹介します。

(1)浮上型雪上車SM30S型
おもに海氷上での運用を目的として設計・製造された雪上車です。車体は軽量なFRP製で海水面での浮上性を有しており、海氷が割れて万が一車体が海面に落ちても長時間浮いていられます。逆に軽量化優先のため保温性が弱く寒いです。

SM30S型
撮影:JARE63 馬場健太郎(2022年4月5日)

(2)小型雪上車SMS40S型
昭和基地周辺や沿岸・大陸周縁部で最も頻繁に使用される雪上車です。変速機がマニュアルのものと油圧式無断変速機のものがあります。車両前部に運転席と助手席があり、車両後部には6名分の長椅子があります。

SM40S型
撮影:JARE63 馬場健太郎(2022年4月5日)

(3)中型雪上車SM60/65S
12フィートコンテナを搭載した専用橇を牽引可能で、「しらせ」と昭和基地との間の氷上輸送などに使用されます。後部の荷台に備えたクレーンで荷物の吊り上げ・運搬もできます。車両前方に備えたブレードで車両周りや小さな起伏をならしたりできるので除雪に使用することも可能です。

SM60/65S型
撮影:JARE63 馬場健太郎(2022年4月5日)

(4)小型雪上車PB100型
ドイツ製のスキーゲレンデ整備車を南極仕様に改造した雪上車です。氷上輸送や前部の排雪ブレードによる基地周辺の除雪など多目的用途の雪上車として導入されました。

PB100型
撮影:JARE63 馬場健太郎(2022年4月5日)

(5)大型雪上車PB300型
ドイツ製のスキーゲレンデ整備車を南極仕様に改造した大型雪上車で、大きな牽引力を有し、内陸での物資輸送から除雪まで多目的に活躍しています。

PB300型
撮影:JARE63 馬場健太郎(2022年4月5日)

(6)大型雪上車SM200型
63次隊で南極へ持ち込まれた最新の大型雪上車で、やや丸みを帯びた車体形状と緑色の塗装が特徴です。内装には木材が使用されていて、ワンルームマンションのような雰囲気です。現在は昭和基地に置かれていますが、今後は南極大陸にある内陸旅行の拠点“S16”へ移送され、深層氷床掘削が計画されているドームふじ基地への内陸旅行で使用されることになります。

SM200型
撮影:JARE63 馬場健太郎(2022年4月5日)

このうち、PB100型とPB300型は油圧可動部が多く、使いこなすにはそれなりの技術が必要です。そのため、これらを運転できるのは63次隊では機械隊員だけに限られており、残念ながら一般の隊員が運転する機会はありません。また、SM200型や、S16に置かれているSM100S型(今回は未紹介)といった内陸旅行用の大型雪上車も、ドームふじへの内陸旅行に参加する隊員でなければ運転する機会は巡ってきません。
そのため、雪上車講習は、一般の隊員も運転する機会が多いSM40S型を中心として、SM30S型とSM60/65S型の計3車種について行われました。(続く

 (JARE63 馬場健太郎)