ルート工作

昭和基地では、観測や輸送の目的地へ向かうため、海氷上や大陸上に安全な道(ルート)を敷く「ルート工作」作業が行われます。昭和基地は、南極大陸から約4km離れた「東オングル島」という小さな島にあります。大陸とはオングル海峡を挟んで目と鼻の先ですが、冬の期間、観測や準備のために大陸や周辺の島々へ赴くには、凍りついた海の上を雪上車やスノーモービルで渡らなければなりません。これまでは、基地周辺に「多年氷(たねんひょう)」と呼ばれる、何年も融けずに成長した分厚い海氷が広がっており、この海氷のおかげで、例年であれば早い時期から海を渡ることができていたのです。

朝焼けに染まる大陸(左側)と氷山が浮かぶ凍った海
任務の目的に合わせて、大陸へのルートを敷く
撮影:JARE67 西村英樹(2026年7月15日)

しかし、私たち67次隊が越冬生活に入る頃(2026年2月頃)、東オングル島を取り囲む海の氷の多くは流出してしまい、海が再び凍りつくのをじっと待つしかありませんでした。

目の前の広大な海は果たして凍るのか?と不安になるほど気温の高い日が続きましたが、冬が近づくにつれて徐々に気温が下がり始め、海氷は少しずつ厚みを増していきます。そして極夜が明けた7月、海氷が安全に移動できる十分な強度に達したことが確認できました。これを受け、いよいよスノーモービルに乗ってルート工作を開始することができました。

海氷の厚さを調べるためにドリルで孔を開ける
撮影:JARE67 常永洋一郎(2026年5月22日)
ルート工作時の移動にはスノーモービルが欠かせない
撮影:JARE67 西村英樹(2026年9月1日)

-20℃〜-30℃という環境下でのルート工作は、とても厳しい作業です。しかし、その時にしか見ることのできない景色に出会えることも。

言葉にするのが難しいほどの瞬間に出会えることも
撮影:JARE67 常永洋一郎(2026年7月1日)

ルート工作開始から2か月。現在ではいくつかのルートが完成し、燃料や物資を積んだ橇を雪上車で引き、大陸への輸送オペレーションが着々と進んでいます。

ルート上には目印とする旗を立てる
撮影:JARE67 西村英樹(2026年8月13日)

見た目にはしっかりと凍っているように見えても、氷の下には冷たい海があることを隊員たちは常に念頭において緊張感をもって行動しています。

「安全がすべてに優先される」

このことを肝に銘じて、これからも安全行動に努めていきます

(JARE67 西村英樹)