地鳴りのように建物を揺らす風の轟音、窓の外は上下左右視界ゼロ、いつもの景色はどこへ...
A級ブリザード中の外の様子。
撮影:JARE67 荒井建伍
9月15日から16日にかけて、非常に発達した低気圧が接近し、昭和基地を猛烈なブリザードが襲いました。今回はその中でも続けられた気象観測を中心にブリザードの様子をお伝えします。
今回のブリザードはA級に分類されました。平均風速25m/s以上、かつ視程(肉眼でどのくらい遠くまで見えるか)100m未満の時間が6時間以上継続した場合にA級に分類され、AからCの3段階のうち最も強い階級となります。A級ブリザードは67次隊の観測では3回目となります。これまでのA級ブリザードでもあまりに激しい嵐で隊員を驚かせてきました。そのなかでも今回は最大風速36.7m/s、最大瞬間風速47.5m/s、視程100m未満どころか10m先も見えないホワイトアウトの状態がおよそ20時間も続くといった状況でA級の基準を大きく上回り、これまでの67次隊で最大規模のブリザードとなりました。
撮影:JARE67 荒井建伍
気象観測は基本観測棟という建物で24時間365日、気象観測担当の隊員が交代しながら継続しており、ブリザード中も例外ではありません。15日朝、風速が25m/sを超え視程も大きく下がり外出禁止令が発令。基本観測棟と生活エリアの建物を行き来するためには一度外に出る必要があるため、人員交代ができなくなりました。そのため前日の夜から基本観測棟で観測業務をしていた私と井上隊員の2人で外出禁止令解除まで観測を担うことに。長い戦いの始まりです。
15日午前中、さらに風が強まり続け、平均風速が35m/sを超えました。台風に置き換えると強い台風に分類される風の強さで、日本では一生に一回経験するかどうかといった人も多いと思われるくらいの暴風です。昭和基地の建物はこのくらいの風にも耐えられるように設計されているため安心ではあるものの、建物のどこにいても耳から離れないゴーという強烈な風の音や小刻みに揺れ軋む建物の音が何時間たってもやむことがなく、いやがおうでも緊張感が漂います。
観測中は外の様子に変化がないか、また機械が壊れずに貴重な観測データが取れているかをいつも以上に頻繁に確認します。視程は人間の目で観測するためドアを開けると、猛烈な勢いでたたきつける雪と風であっという間に全身雪まみれ、あたり一面ホワイトアウトで5m先すら見えません。
撮影:JARE67 荒井建伍(2026年9月15日)
これだけ風が強いと建物のほんのわずかな隙間からも雪が吹き込むため、「屋内」の除雪作業も行います。また建物の風下は大量に雪が吹き溜まります。ドアを開けた際、目の前に雪の壁が現れたときは思わず息をのみました。
撮影:JARE67 荒井建伍(2026年9月15日)
生活エリアに戻れない、となるといつもの食堂では食事を取れませんし、自分の部屋にも戻れません。しかしこの基本観測棟はそのような状況に備えてベッドやトイレなどの生活設備や非常食が整っています。気象隊員も生活エリアに帰れないことを想定し、食べ物や装備を準備します。とはいえ調理隊員が作ってくれるおいしいできたての食事をみんなで食べられないのは少し寂しくも感じます。
撮影:JARE67 荒井建伍(2026年9月16日)
翌16日の夕方、ようやく悪天のピークを過ぎて外出禁止令が外出注意令に切り替わり、実に46時間ぶりに生活エリアの建物に戻ることができました。しばらく離れていた隊員の顔を見るとほっとした気持ちになります。翌日17日は猛烈なブリザードが嘘のように晴れ渡り、隊員総出で建物や設備の点検、除雪を行いました。
撮影:JARE67 井上創介
普段オーロラや星空、雄大な氷山の景色などで我々を感動させてくれる南極。ふとすると南極に潜む危険のことを忘れてしまいそうですが、昭和基地の先輩方の「南極を舐めるな」という言葉を胸に、今後も安全第一で貴重な観測データを記録し未来へ残していきます。
(JARE67 荒井建伍)


