3月3日から3月5日に昭和基地を襲った67次隊初ブリザードについて現地の気象隊員よりお届けします。
ブリザードとは南極で発生する吹雪を指す言葉で、風が強いばかりでなく、激しい降雪や吹き飛ばされる雪のため視界が悪くなるという特徴があります。日本の南極地域観測隊では下の表に示す基準でブリザードをA級~C級に分類しています。表からも分かる通り、単に風が強いだけではなく視程が低下する(見通しが悪くなる)ことや、その状態が継続することも条件として必要です。風速は風速計という観測装置により自動で観測しますが、視程は私たち気象隊員がどのくらい遠くのものまで見えるかを実際に肉眼で確認して観測しています。
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ランク |
10分平均風速 |
視程(見通し) |
継続時間 |
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A級 |
25 m/s以上 |
100m未満 |
6時間以上 |
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B級 |
15 m/s以上 |
1km未満 |
12時間以上 |
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C級 |
10 m/s以上 |
1km未満 |
6時間以上 |
表:昭和基地におけるブリザードのランク分け
※全ての条件を満たした場合にのみ認定される
今回のブリザードは、最大平均風速27.8 m/s、最大瞬間風速36.0 m/sで、それぞれ4日朝に観測されました。最大平均風速27.8m/sは時速に直すと約100 km/hですので、高速道路を走る自動車とほぼ同じ速度で風が吹いていたことになります。風の強い時間帯は屋内にいてもゴー、ゴーッと風がぶつかる音が響き、建物も震えて少し恐怖を感じました。一方で視程は継続して低下せず、風が一番強い4日朝の時点ではまだ表のブリザード基準を満たすほどではありませんでした。降雪量や昭和基地周辺に元々積もっていた雪が少なかったことが影響していると考えられます。その後、風がピークを過ぎて弱まり始めてから雪がまとまって降りました。その際に視程が低下してブリザード基準(C級)を満たしました。
撮影:JARE67 荒井建伍(2026年3月4日)
写真奥にはブリザードによる吹き溜まりもできている。
撮影:JARE67 山田健太郎(2026年3月3日、3月4日)
ブリザード中は屋外が非常に危険な状態となるため、外出注意令や外出禁止令が隊長判断で出されることがあります。外出注意令中は屋外での作業は禁止で、やむを得ず建物間を移動する必要がある場合は2人以上で、建物を繋ぐように張られた安全索・ライフロープ沿いに移動するなど制限が加わります。また外出禁止令では外出の一切が禁止されます。気象隊員は交代しながら基本観測棟での観測を実施していますが、外出禁止令中はブリザードが収まるまで人員交代ができず、基本観測棟に残った隊員がそのまま観測を継続します。今回のブリザードでは、外出注意令が3日昼から4日夕方まで出され、降雪が強まった4日の日中には外出禁止令も出されました。
また、視程が改善した時間帯である4日朝には野外観測支援担当隊員により野外歩行訓練が実施されました。足元も雪があまり積もっていない状況下であり、今後も来るブリザードに備えて暴風に慣れるための訓練です。安全に配慮して基地主要部の建物間を300mほど歩き、ライフロープの使い方や暴風時の歩行を確認しました。この時の平均風速は約23m/s。参加者は万全の装備で臨みましたが、風に向かって歩くのはかなり大変です。
気を付けていってらっしゃい。
撮影:JARE67 山田健太郎(2026年3月4日)
体から伸ばしたロープをカラビナで常にライフロープに接続した状態で移動します。
撮影:JARE67 井上創介(2026年3月4日)
今回のブリザードはC級ブリザードで規模としては一番下のランクでしたが、今後来るであろうB級やA級ブリザードに備えるとともに、移動の際には今回の訓練を思い出し安全第一に行動していきたいと思います。
(JARE67 山田健太郎)


