2月9日、昨日係留系を回収した箇所と同じポイントに新たな係留系の設置を行いました。この観測点はトッテン氷河を底から融かしているとされる暖かい水の通り道にあたり、水温や流速がどのように時間変化するのか特に知りたい場所です。
係留系は1度設置すると回収までそれきりで、設置後に異変を見つけてしまっても取り出して直すことができません。とにかく準備が命なので、出発前の装置の選定や南極への輸送に気をくばることはもちろん、「しらせ」に乗船してから設置当日の今日まで入念に調整を行ってきました。
撮影:JARE67 池田未歩(2026年2月9日)
撮影:JARE67 池田未歩(2026年2月9日)
8時頃、係留系の設置作業が始まりました。クレーンで係留系のパーツを一層ずつ吊り上げ、海に投入し、最後に海底で踏ん張る錘(おもり)となるレールシンカー(1トン)を投入します。全て沈んだことを確認した後は、音響信号を送信して生存確認を行い設置作業は終了です。「しらせ」のみなさまの見事なチームワークのもと、用意した係留系はあっという間に沈んでいきました。
撮影:JARE67 池田未歩(2026年2月9日)
撮影:JARE67 池田未歩(2026年2月9日)
撮影:JARE67 池田未歩(2026年2月9日)
これまで海氷域に設置した係留系の多くは、氷山にさらわれないよう海表面から係留系の先端まで500mほど余白を設けていました。ですが、今回の系は先端が水深20m地点と海表面ぎりぎりまで先を伸ばしています。
画像提供:JARE67 平野大輔
海氷や棚氷が融けてゆく時の海洋の時間変化が知りたい、という目的からすると融解水の溜まり場となる表層の変化は貴重なデータになりますが、先に述べた氷山に攫われるなどのリスクがあり、誰も実践できていなかった試みでした。海の上層も海氷の減少に伴い暖水化していると考えられますが、表層をとったデータは世界的にもほとんどありません。
今回の系は万が一氷山に攫われても下層だけは生き残るよう、あえて破断点を設けているとのこと。担当の平野隊員曰く「相当チャレンジングな系」だといいます。来年の回収が楽しみです。
(JARE67 池田未歩)


