係留系は、様々なセンサーを取り付けたロープに錘(おもり)をつけて海底に係留させ、水温や塩分、流速などのデータを連続で測定する観測システムです。先日回収した海底圧力計と同じように設置した場所を再度訪れ、センサーを物理的に回収してデータを取り出す必要がありますが、成功すれば海の季節・経年変動を捉えるような長期連続データを得ることができます。
近年トッテン氷河沖の集中観測を進める日本の観測隊では、ほぼ毎年設置と回収を繰り返しながらトッテン氷河沖での係留系観測に精力的に取り組んでいます。
出典:ウェブ極『「南極の海の鼓動」を聞く、係留系観測』
トッテン氷河の大規模融解のメカニズムを明らかにするには融けているところ、つまり棚氷のすぐ近くの様子が知りたいので、設置地点はおのずと氷河末端部の海域になります。周辺には棚氷から崩れた氷山が漂っていて、流れてきた氷山にさらわれてしまったり、厚い海氷に覆われて近づけなかったり……潮流も流れの早い箇所が多く難易度の高い観測ポイントです。
トッテン氷河沖集中観測初日となる2月8日、係留系の回収作業が行われました。この系は、昨年回収を試みたものの、厚い海氷に阻まれて船が近づくことすらできず、位置が分かっていながら回収できないという苦い思い出があるものです。設置した際に確認した緯度経度をもとに、「しらせ」の協力のもと船を寄せていきます。今年は周辺に浮かぶ海氷が少なく難なく近づくことができ、第一関門はクリア!
そして、音響信号で錘(おもり)を外して浮上を指示する「切り離し」信号を送ると……
撮影:JARE67 池田未歩 (2026年2月8日)
ものの数分のうちに、「あった!」と声が上がりました。約2年ぶりの再会です!
撮影:JARE67 池田未歩(2026年2月8日)
撮影:JARE67 池田未歩(2026年2月8日)
「いつものことだけど、本当にこのドキドキは心臓に悪い……」とそっと胸を撫で下ろすのは、係留系観測をメインで担当する平野隊員です。あらゆる状況を想定して機材を選び、事前に繰り返しシミュレーションをするなどしても、南極の大自然は私たちの予想を簡単に超えてしまうこともあるため実際に回収されるまでは落ち着かない日々が続くといいます。
この日回収した係留系には元々予定していた1年分のデータに加え、昨年回収を断念した日から今日までを含む合計2年分の貴重なデータが詰まっており、これまでに得た分を合わせて4年分のデータセットとなりました。おかえりなさい!
(JARE67 池田未歩)


