南極の陸水生態系の謎に迫る!(陸上湿地チームの観測・後編)

陸上湿地チームの観測について、前編ではメインとなる湿地観測について紹介しました。後編では、湿地との比較のために行う、冬でも湖底まで凍らない湖での観測について紹介します。

野外観測拠点の一つであるスカルブスネスにはキャンプ地から徒歩30分〜1時間ほどの距離にいくつもの湖が点在しており、日毎に違う湖を訪れ、基礎データを得るための採水や湖底の堆積物の採取を行いました。

湖を求めボートを背負ってあちらこちらへ...
撮影:JARE67 池田未歩(2026年1月1日〜5日)
調査で訪れた長池。水深10mほどの淡水湖です。
撮影:JARE67 池田未歩(2025年12月30日)
調査で訪れた仏池
撮影:JARE67 池田未歩(2026年1月2日)
(左)仏池での採水の様子 (右)いくつかの項目はその場で測定します
撮影:JARE67 池田未歩(2026年1月2日)
DNA測定のためのろ過も現場で実施
撮影:JARE67 池田未歩(2026年12月30日)

湖底の堆積物を採取する方法はコアラーとエクマンバージ採泥器の2種類を使用しています。

コアラーは堆積物を筒状に採取でき、堆積の層を観察して年構造を調べるのに適した手法。一方採泥器は、湖底の表面を四角くがばっと採ることができ、広い範囲の表層をまとめて採取できます。点で深く採る方法と、面で広く採る方法の2通りとイメージすると分かりやすいかもしれません。

到着後早々にボートの準備
撮影:JARE67 池田未歩(2026年12月30日)
コアラーでの堆積物採取の様子
撮影:JARE67 池田未歩(2026年12月30日)
層ごとにサンプルを取るほか、一つは筒状のまま冷凍で日本に持ち帰ります。
撮影:JARE67 池田未歩(2025年12月30日)
エクマンバージ採泥器による堆積物採取の様子
撮影:JARE67 池田未歩(2026年1月2日)

とある日、エクマンバージ採泥器により微生物や藻類などの集合体として湖底に林立するコケボウズの一つをすっぽり採取することができました。

縦に割ってみると...光合成で青々とした表層と、酸素が消費されてしまい嫌気的な環境で黒くなった層、コケボウズの根と思われる茶色の部分がはっきりと分かれていることがわかります。生物が少なく日本の湖沼と比べて貧栄養といえる環境で、数百年ほどかけてゆっくりと形成されたと考えられています。

採取されたコケボウズ
撮影:JARE67 池田未歩(2026年1月2日)

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スカルブスネスの露岩域に多数湿地や湖があるとはいえ、重い機材やボートを背負ってありとあらゆる場所へ赴きサンプルを取る陸上湿地チーム。執筆者は約10日間ほどお世話になりましたが、それでも同行させていただいたのは全期間の1/3ほどで陸上湿地チームの観測はまだまだ続きます。

いずれも採取したサンプルは日本に持ち帰りDNA解析や、堆積物中の化学成分・年代構造の分析などを行う予定です。南極の湿地がどんな環境条件のもとで形成され、どのような生態系を育んできたのかが少しずつ明らかになっていくかもしれません。今次から始まった陸上湿地チームの今後の続報にぜひご期待ください。

陸上湿地チームの3人。
撮影:JARE67 池田未歩(2026年1月3日)

(JARE67 池田未歩)