氷海入りした12月15日、「漂流系」の投入を行いました!漂流という名前のとおり、さまざまな測器をつけたブイを海に漂わせてデータや試料を集める装置です。
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今回の漂流系観測の目的を話す上で重要なのが、大気中のCO2の量を左右する植物プランクトンについて。植物プランクトンは海面で光合成を行い、海水中のCO2を取り込んで成長します。すると海面近く(表層)のCO2の濃度が下がり、海のCO2濃度が大気のCO2濃度より小さくなるため、大気から海へCO2が入ることになります。もちろん、水中での呼吸が光合成より大きいときには海から大気へ放出される逆の現象が起きます。このように海と大気は絶えずCO2をやり取りしています。
植物プランクトンの光合成で有機物になった炭素(植物プランクトンそのものを含む)は食物連鎖などを通して海の中を巡ります。この一部が動物プランクトンや死骸、糞やマリンスノーなどの粒子として、大気と離れた深い海へ沈んでいきます。こうして生き物の活動によって炭素が深海へ運ばれる仕組みを「生物ポンプ」と呼びます。生物ポンプが働かなかった場合、大気中の二酸化炭素量が最大で1.5倍になると試算する報告もあるほどで、植物プランクトンのはたらきとそれに伴う生物ポンプの仕組みは、地球の温まり方を左右する重要な役を担っています。
海氷の縁では、海氷が融けて光と栄養環境が整うことで植物プランクトンが大増殖する「氷縁(ひょうえん)ブルーム」という現象が起こることが知られています。ただしアクセスが困難な南極の海で同じ場所を長く追い続ける観測が難しく、氷縁ブルームが何をきっかけに始まり、どんな速さで変化し、どのようにして終わるのかなど、十分な理解に至っていません。
そこで登場するのが漂流系!本来観測が難しい海氷のそばでも氷と一緒に漂いながら、プランクトンの量や海水中のCO2(分圧)、そしてプランクトンの成長に欠かせない微量栄養である鉄など、海の表層の時間変化を捉えることができます。
今回の観測では氷縁ブルームのメカニズムを理解し、大気↔︎海や、海の中で起こる炭素の移動を把握し、氷縁ブルームが地球の温まり方を左右する炭素の循環にどのような役割を果たしているのか明らかにすることを目的としています。
撮影:JARE67 池田未歩 (2025年12月15日)
微量の鉄の観測を行うクリーン時系列採水器(RAS)は、汚染が許されないことや使用する試薬の都合上予め準備をしておくことが難しく、海洋チームは早朝からの作業となりました。
撮影:JARE67 池田未歩 (2025年12月15日)
撮影:JARE67 池田未歩 (2025年12月15日)
撮影:JARE67 池田未歩 (2025年12月15日)
撮影:JARE67 池田未歩 (2025年12月15日)
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氷海への投入にはしらせ乗員のみなさまの支援を受け、無事完了です!この系はレグ2での回収を予定しています。3ヶ月後にまた会おう!
③沈降する粒子を採集するセジメントトラップ ④沈み込む速度を捉えるドップラー流速計
撮影:JARE67 池田未歩 (2025年12月15日)
撮影:JARE67 池田未歩 (2025年12月15日)
撮影:JARE67 池田未歩 (2025年12月15日)
(JARE67 池田未歩)


