南緯55度通過&観測隊ならではの一コマ

12月13日こちらの時間で朝の7時半ごろ、南極観測船「しらせ」は南緯55度を通過しました。日本の南極観測では、南緯55度以南を南極地域と定義しており、いよいよ南極での活動が始まることになります。

南緯55度入りを告げる船内放送が流れた朝の7時半頃は、ちょうど海洋観測が始まる時間。「しらせ」船尾の観測甲板では多くの隊員・しらせ乗員が作業にあたっているところでした。

船内放送が流れた時、さっと時間を確認して作業に戻る海洋観測担当の平野隊員
 撮影:JARE67 池田未歩 (2025年12月13日)

この日も順調に進む海洋観測。初日から素晴らしい連携だったものの、日に日にスムーズになっていくように見えます。
撮影:JARE67 池田未歩 (2025年12月13日)
南緯40度の最初の観測点から毎日行っているCTD採水システムからの採水
撮影:JARE67 池田未歩 (2025年12月13日)

今朝の気温は約3℃。冷たい水を触る繊細な作業は堪えるよなぁと写真を撮っていたところ、CTDのフレームに不思議な物体がぶら下がっていることに気がつきました。

左:大橋隊員の目線の先にご注目 右:コンブとカメノテのような何か
撮影:JARE67 池田未歩 (2025年12月13日)

海洋チームではまったくわからずお手上げだったため、海に返そうとしていたところ「それもらってもいいですか?」との声が。手を挙げたのは観測の様子を見学していた採泥チーム&サンゴの研究者の千徳隊員です。カメノテのような何か...は、おそらくエボシガイの一種ではないかとのことでした。

しらせ乗員の方も興味津々
撮影:JARE67 池田未歩 (2025年12月13日)

千徳隊員に聞くと、この生き物を標本にするということだったのでその後の作業も見せてもらいました。採泥チームはその名の通り泥の採集だけでなく、底引き網のような機材をつかった生物採集も予定しています。そのため標本をつくるための道具はばっちり揃っていました。

①標本と聞くとホルマリンを使うイメージがありますが、DNA保存に適した(=のちにDNA解析も可能な)エタノールを使うことも多いとのこと。ただし、エタノールでは生物の色が変わってしまうため、固定前に撮影
②③一つずつ取り外して、スケールがわかるよう記録 ④完成!あっという間でした。

この標本は、CTDとともに採れたので採集時の緯度と経度がしっかりと記録されており、研究用の標本としての価値が高いそうです。千徳隊員の専門の生き物ではないため、帰国後近い分野の研究者に渡すというお話でした。

船内にいる海上保安庁の金子隊員と連絡をとりつつ、CTD揚収時の位置情報を記録する地圏モニタリング担当の岡田隊員
撮影:JARE67 池田未歩 (2025年12月13日)

予定している観測にまつわるものではないエピソードトーク的な裏話ですが、さまざまな専門家が集まる観測隊ならではの連携プレーを垣間見た一コマでした!

(おまけ)

南緯55度通過の瞬間はちょうど観測に取り掛かっていた海洋チームも
観測がひと段落したタイミングで遅ばせながら記念撮影。お疲れ様でした!
撮影:JARE67 池田未歩 (2025年12月13日)

(JARE67 池田未歩)