昭和基地での気象観測は主に基本観測棟で行われていて、屋上には観測に使われる様々な機器が設置されています。10月末のある日、基本観測棟の屋上では臼田隊員が日射放射観測機器とエーロゾル観測機器のブリザード対策を行っていました。
日射放射観測は、太陽から地球が受け取るエネルギーである「日射」と、地球から宇宙空間へ放出されたり、雲や温室効果ガスによって地球に再び放出されたりするエネルギーである「赤外放射」などを観測するものです。温室効果ガスが増加すると大気から地球へ向かって放射する赤外放射が増加するため温暖化が進行します。精密な日射放射の観測は気候変動の把握や地球温暖化の予測精度向上のために不可欠なものとなっています。また、日射放射を散乱・吸収することで地球に影響を及ぼす大気中の微粒子「エーロゾル」の観測も行っています。
撮影:JARE66 臼田拓人(2025年12月8日)
撮影:JARE66 米村幸司(2025年10月29日)
これら屋上に設置された各種観測機器で常時観測を行っていますが、ブリザード中は強烈な風が吹くため、機器が破損したり吹き飛ばされたりしてしまうおそれがあります。そのため、ブリザードが予想される前には強風対策を行っています。機器一つ一つのねじの増し締めを行うほか、頑丈なカバーをかけたり、振動に弱い機器や風の抵抗を受けやすい部品は取り外して室内に退避したりと様々な対策を行っています。風が収まった後は、破損等がないか確認したのち、逆の手順で観測を復帰させています。ブリザード中は観測機器のガラス窓が雪や塩で汚れるためガラス窓等の清掃も欠かせません。越冬期間中はブリザードが平均20回以上来るため、できる限り欠測時間を短くできるよう気象状況を見極めながら何度もブリザード対応を実施しています。
撮影:JARE66 臼田拓人(2025年12月8日)
撮影:JARE66 米村幸司(2025年10月29日)
撮影:JARE66 米村幸司(2025年10月29日)
(JARE66臼田拓人・米村幸司)


