しらせへの物資搭載

南極へ向かう準備の中でも、特に大変なのが「輸送」の仕事です。南極観測船「しらせ」が昭和基地に向かうのは年に一度きりなので、限られた時間で必要な物資をすべて送り込むため、あらかじめ綿密な輸送計画を立て作業を進める必要があります。

今年持ち込む物資の総量は約1,133トンにのぼり、観測機材や車両、隊員私物、越冬に必要な燃料・食料、観測・設営資材など様々です。搭載の様子の一部を写真とともにご紹介します。

大井埠頭に停泊する「しらせ」
撮影:JARE67 池田未歩(2025年11月7日)

☆危険品(燃料など)の積込み

燃料など危険品と呼ばれるカテゴリの物資は、納品されたその日中に全てしらせに積み込まなければなりません。(危険品は日をまたいで岸壁に置いておくことができないため)例年危険品をまとめて岸壁に納品してもらい、それらを全て1日でクレーンで飛行甲板に揚げています。

毎年この日は夕方までに物資が揃い、全て積み終えることができるか勝負の1日となります。

厳冬期に雪上車に使用する「南極用低温燃料」や、観測隊ヘリなどの航空機に使用する航空燃料「Jet A-1」はこのようにドラム缶で持ち込みます。
撮影:南極観測センター(2025年10月28日)

☆コンテナ積込みなど

横浜で行われていた「しらせ」の一般公開で、南極観測隊の表示が入った青いコンテナに気づいた方もいるのではないでしょうか。現行の「しらせ」には56基のコンテナを積むことができるセルガイドが付いており、下から順序よく積み込まれていきます。白のリーファーコンテナ(冷凍・冷蔵コンテナ)は、乗船中も定期的に点検する必要があるため、飛行甲板からアクセスしやすい一番下に積みます。

左:積込む順番に従い、岸壁に整頓されたコンテナ。この作業を「マーシャリング」というそうです。
右:テキパキと積まれていきます。緑色もあります。
撮影:JARE67 池田未歩(2025年11月7日)
スムーズに輸送を行うため、コンテナにはラベルが貼ってあります。調理隊員も夏頃にこの作業を実施していました。
撮影:JARE67 池田未歩(2025年8月28日)
積み込んだその日のうちにリーファーコンテナに電源を引き込み、ワッチ(定期点検)を開始
撮影:JARE67 池田未歩(2025年11月18日)

しらせの後部貨物倉は構造上、右側にやや寄った作りになっているので、積込みが進んでいくと少しだけ右に傾いていきます。船が傾くと荷物の積込みにも支障がでるため、到着後の輸送スケジュールや物資重量のバランスを見つつ、艦側と相談しながら搭載場所を決定しています。輸送担当の工夫が光るポイントです。

右にやや傾いているのでコンテナは左舷側から搭載します。積込み初めだけ塗装がパラパラっと落ちてくる音が聞こえ、傾きを実感。
撮影:JARE67 池田未歩(2025年11月7日)

またコンテナ積込み作業と並行して、船倉への物資搭載も行われていました。越冬物資など主に昭和基地に着いてから使用するものはこの写真にあるスチールコンテナに梱包され南極まで運ばれていきます。

輸送担当が決定した搭載場所にきちんと積込まれているか、立ち会って確認します
撮影:JARE67 池田未歩(2025年11月7日)

☆バラ物資の搭載

南極到着後に出番がある荷物は「しらせ」船倉に積み込まれますが、航海中に使う船上観測の機器類や私物はダンボールの状態でしらせに積み込みます。

パレットに載せ、クレーンで船に揚げた後は台車を使用...したいところですが、段差も多く、細々とした状態の物資も多いため観測隊名物(?)のバケツリレーで各部屋に積み込んでいきます。

積込み待ちのバラ物資(一部)
撮影:JARE67 池田未歩(2025年11月5日)

観測機材や私物が運ばれていきます。
撮影:JARE67 池田未歩(2025年11月5日)

バケツリレーの後、紐で保定が完了した観測物資
撮影:JARE67 池田未歩(2025年11月5日)

◇ ◇ ◇

隊員・輸送会社・しらせ乗員の力を借りながら約2週間にわたりほぼ連日行われた「しらせ」への積込みですが、最後にしらせ艦長による搭載状況のチェックを受け、11月13日に全ての作業が完了しました。

お疲れ様でした!そしてご支援いただいたみなさま、今年もありがとうございました!

現場で指示を出す輸送担当の柏木隊員。お疲れ様でした!
撮影:JARE67 池田未歩(2025年11月5,7日)

(JARE67 池田未歩)