インテルサット衛星回線設備の運用保守訓練

8月26日から28日の3日間、KDDI山口衛星通信所(山口県山口市仁保)を訪問し、インテルサット衛星回線設備の運用保守訓練を行いました。

インテルサット衛星とは、インド洋上の赤道上空36,000kmに位置する通信衛星です。昭和基地とKDDI山口衛星通信所に設置されているパラボラアンテナは、このインテルサット衛星を介して通信を行い、観測データの配信、オンライン会議、南極授業などの映像中継をリアルタイムで実施しています。また、日本にいる家族や友人とのメールやメッセージアプリでのやり取りにも使用されており、昭和基地の隊員と日本の家族との心の絆をリアルタイムでつなぐ大切な通信手段となっています。

昭和基地との通信を行っているKDDI山口衛星通信所側のパラボラアンテナ
撮影:JARE67 島田裕美(2025年8月26日)

まず初めに、衛星通信の基礎講義を受講し理解を深めた後、実際の衛星回線設備を用いて機器操作の実習を行いました。

衛星通信に関する講義
撮影:JARE67 島田裕美(2025年8月26日)

パラボラアンテナの向きがインテルサット衛星から外れてしまうと、通信ができなくなります。通常は自動制御によってインテルサット衛星を捕捉していますが、万が一外れた場合に備え、測定器を用いてインテルサット衛星からの電波を探索し方向を特定する実習や、自動制御装置を用いてアンテナの角度設定値を手動で変更する実習も行いました。

パラボラアンテナの向きを自動制御する機器の操作訓練
撮影:JARE67 島田裕美(2025年8月28日)

パラボラアンテナの構造を実物で学び、メンテナンス時の作業箇所や注意点について確認しました。

パラボラアンテナの構造を実際の設備で学びました
撮影:JARE67 島田裕美(2025年8月28日)

昭和基地で年に一度実施しているアンテナ駆動部のグリース交換の実習や、パラボラアンテナの向きを手動で調整する訓練も行いました。昭和基地のアンテナは通常、自動制御でインテルサット衛星の方向に向いていますが、制御装置が故障した場合には手動での調整が必要です。

手動調整は過酷な作業であり、かなりの力を要するハンドルを数分かけて回しても、角度を1度しか変えられないという地道ながらも重要な訓練を行いました。

パラボラアンテナの向きを手動で調整する訓練
撮影:JARE67 島田裕美(2025年8月28日)

昭和基地では、機器が故障してもすぐに修理できない場合があります。南極観測船「しらせ」で翌年に部品を取り寄せたり、故障した機器を一度日本へ持ち帰って修理し、再び昭和基地へ運ぶ必要があるためです。 そのため、どのような故障が起こりうるかを事前に想定し、故障前に部品を交換したり、万が一に備えて修理に必要な部品を現地に準備しておくことが重要です。さらに現地での修理が困難な場合に備え、代替手段による対応方法を習得することも非常に重要な訓練のひとつです。

大きな故障が起きないことを願いつつ、必要な訓練と準備を着実に進めてまいります。

(JARE67 島田裕美)