ジリジリ進めるルート工作

昭和基地は、南極大陸から4kmほど離れた東オングル島にあるため、島を離れて行動するには海氷(海に張った氷)の上を移動する必要があります。しかし、海氷上を好き勝手に走るのは危険なので、決まったルートを作成しています。海氷状況は毎年変わるため、ルートは越冬隊ごとに作り直す必要があります。

今年も南極大陸内陸部にある「ドームふじ観測拠点II」でアイスコアの掘削などの観測を計画しています。11月に昭和基地を出発予定ですが、その準備のために少しでも早く大陸上へのルートを作りたいところでした。海氷状況が良い年であれば5月ごろには南極大陸まで移動できるのですが、今年は状況が良くなく、いまだに大陸に上がれていません。

ここまでのところ、5/20,26にルート工作を行い、昭和基地から北のしるべ島周辺までルートを伸ばしました。ここから先の海氷は4月末に張り始めたばかりでまだ薄いため、これ以上進むことはできません。

一方で、6/17には西オングル島へのルート工作も開始しました。東オングル島の隣にあるこの島には宙空グループの測器が設置されており、メンテナンスが必要だからです。この日は、昭和基地からスタートして西オングル島への上陸予定地点の約400m手前までルートを伸ばしました。極夜で太陽が水平線の上に出ないため、活動できたのは正午前後の4時間ほどでした。

今年は海氷状況が良くなく、現在は上記2つの方面にしかルートを伸ばせていません。今後も海氷状況の確認を継続して行い、少しでも早くルートを伸ばす計画です。

出発前にスノーモービルを運び出して準備しています。
午前9時半ですがまだ薄暗く、ライトが必要です。
撮影:JARE66 清水大輔(2025年5月26日)
クラック(氷の割れ目)があれば、危険がないか確認しながら進みます。
撮影:JARE66 米村幸司(2025年5月26日)
数百メートルごとに電動ドリルで海氷に穴を開け、厚さを測定します。
この地点の海氷の厚さは40cmほどで、雪上車の通行にはまだ厚さが不足しています。
午後1時ごろですが、もう陽が沈みそうです。
撮影:JARE66 米村幸司(2025年5月26日)
南極の冬至(6/21)を控え、正午前後の明るい時間帯を利用してルート工作を行いました。
ルート上には赤旗を立てていきます。
撮影:JARE66 清水大輔(2025年6月17日)
海氷上で行動していると、2羽のコウテイペンギンに出会いました。
 撮影:JARE66 清水大輔(2025年5月20日)

(JARE66 清水大輔)