6月12日、「海氷下における魚類の行動・生態の解明」という課題について研究・観測を行う浅井隊員と黒田隊員とともに漁獲調査として魚釣りに行きました。南極の魚研究は夏期間のデータが集まっている一方で、越冬期間の研究が進んでいません。夏の間は太陽の光が降り注ぎ、エサとなる生物が増えて魚の活動も活発になっていると言われていますが、極夜期で太陽の光が無くなった時にどう変化するのかはまだ良く分かっていません。そのため冬の魚の生態を調査し、夏と比べて行動は変化しているのかなどを調べるためにサンプル調査として魚釣りを行っています。釣った魚は後で胃の内容物を調べ、どのような物を食べているかなどを調べます。
この日は午前中だけでも11匹の「ショウワギス」の釣果があり、外気温マイナス20度、そして厚い海氷の下で豊かな自然が広がっていることを感じました。「ショウワギス」は昭和基地周辺に最も多い魚で釣れる魚の9割方はこの魚となっています。大きさは全長12-30cm程度、個体によって模様のバリエーションが様々なところが面白いです。

撮影:JARE66 米村幸司(2025年6月12日)

撮影:JARE66 米村幸司(2025年6月12日)

撮影:JARE66 米村幸司(2025年6月12日)

撮影:JARE66 米村幸司(2025年6月12日)
調査のために月20匹を目安に、毎月定期的に魚釣りを行います。釣れる時は良いのですが、釣れない時は気温がマイナス20度代なのでとても大変な作業になっています。少し遡りますが5月29日の調査では、釣った魚に発信機を取り付ける作業も行っていました。魚に取り付けた発信器からの信号を専用の受信機で記録し、遊泳深度や3次元の位置情報を取得します。これらの行動データと海洋観測データなどを組み合わせて生態を分析していきます。

撮影:JARE66 浅井咲樹(2025年5月29日)

撮影:JARE66浅井咲樹(2025年5月29日)

撮影:JARE66 黒田真央(2025年5月29日)
(JARE66 米村幸司)