3月8日、10日、20日に、トッテン氷河沖に係留系観測システムを設置しました。係留系観測で使用する一式の装置を「係留系」と呼びます。フロート(浮き)や計測器が長い紐でつながっており、片方の端には錘(おもり)がついています。海に入れると錘を下にして海底から立ち上がるように縦に伸び、その地点に留まって測定し続けます
係留系を設置することで、一定の期間、海の特定の場所における、海水の流れや水温・塩分・溶存酸素などを長期間連続的に測定することができます。

撮影:JARE66 北本 憲央(2025年3月20日)

撮影:JARE66 北本 憲央(2025年3月10日)
南極大陸の氷床・氷河は海の方向へ流れており、氷床末端部の海に浮いている部分は「棚氷」といいます。トッテン氷河では、沖合から流れ込む比較的暖かい海水が棚氷の底面を融解していると考えられています。
観測隊はこれまで、「しらせ」での係留系観測によって長期間の連続的なデータの取得に成功しており、世界に先駆けて非常に重要な研究成果が得られています。66次隊では、暖かい海水の流入経路沿いの大陸棚の入り口に1つ、海氷が作られる海域に2つ、計3つの係留系を設置しました。
8日(南緯65.3度、東経119度付近):ロープの長さ50m、水深約530m
10日(南緯66.3度、東経119.4度付近):ロープの長さ300m、水深約820m
20日(南緯66.2度、東経119.3度付近):ロープの長さ800m、水深約810m

流速計(写真左上)、温度・塩分・圧力・溶存酸素計(右上)、ブイ(左下)
最後はおもりをつけて海底まで沈めます(右下)
撮影:JARE66 北本 憲央(2025年3月10日)

撮影:JARE66 北本 憲央(2025年3月10日)
係留系観測を担当する大橋隊員は「各箇所に無事に係留系を設置でき、ほっとしています。沖から流れてくる暖かい海水や、氷が融解した後の淡水が通るルートなど海洋環境の時間変化を捉えるデータをしっかりと取得したいです」と話しました。今回設置した係留系はいずれも67次隊が回収する予定です。
係留系観測に関するより詳しい内容はこちらをご覧ください。
「南極の海の鼓動」を聞く、係留系観測
(JARE66 北本憲央)