漂流系観測 投入と回収

3月12日、海氷下の生態系を観測するための漂流系観測システム(以下、漂流系)を投入しました。

海氷の縁では氷が融ける春から夏に植物プランクトンが大増殖します。この大増殖のしくみや、プランクトン増殖後の海洋環境の変化、海氷の下に付着している藻類の行方などを調べることが漂流系の目的です。今期は来年度の長期漂流観測に向けて、新しく導入したクリーン時系列採水器のテストも含めた短期間の観測を行いました。

海水の塩分、温度などを計測するセンサー(x4)、粒子状になって沈降するプランクトンの糞や遺骸など(マリンスノー)を採取するセジメントトラップ(x2)、48本ものサンプル容器が搭載された採水器(x1)、そして流速計(x1)を、GPSを搭載したブイに取り付け海に浮かべます。そして漂流させたまま観測し続けます。

漂流系に使用される観測装置を準備中
撮影:JARE66 北本 憲央(2025年3月12日)
各観測装置を順番に投入
撮影:JARE66 北本 憲央(2025年3月12日)
投下後、流されていく漂流系
撮影:JARE66 北本 憲央(2025年3月12日)

3日後の3月15日。午前8時前に「漂流系を視認した」という放送が入り、8時から回収作業に入ることになりました。見つかった漂流系は海氷に阻まれ回収が困難かと思われましたが、「しらせ」乗員のみなさんの見事なチームワークで無事回収することが出来ました。

漂流系の観測を計画・実施した真壁竜介隊員は、今回の回収成功に「よかった」と心底ほっとした表情を見せました。また、新たな採水システムを監修した杉江隊員(JAMSTEC所属)は「採水システムの動作とサンプルの取得はほぼ完ぺきでした。あとは帰国後の分析結果が待たれます」と語っていました。

漂流系は、観測が難しい海洋の表層における生態系の時間変化に関するデータをもたらしてくれる重要な観測です。取得した試料・データは帰国後に本格的な分析を行います。どんな結果が得られるのか、今後の分析に期待です。

漂流系発見!どこかわかりますか?
撮影:JARE66 北本 憲央(2025年3月15日)
船尾で捕獲した漂流系を船首まで誘導
撮影:JARE66 北本 憲央(2025年3月15日)
ブイに雪が!
撮影:JARE66 北本 憲央(2025年3月15日)
採水器の回収
撮影:JARE66 北本 憲央(2025年3月15日)
回収した観測装置からサンブルを採取する観測隊員たち
撮影:JARE66 北本 憲央(2025年3月15日)

(JARE66 北本 憲央)