南極のブリザードとオーロラ

3月1日、早朝に第66次南極地域観測隊越冬隊は初めてのブリザード(吹雪)に見舞われました。前月末もかなり強い風が継続して発生していましたが、視程や継続時間から今回の状況がブリザードとして認定されました。そして越冬隊長から外出注意令、そして外出禁止令が出されたことにより、行動が制限され、人員確認がすぐさま行われました。以前よりそろそろ来るだろうということが周知されており、事前の心構えがあったので当日は皆落ち着いて対応することが出来ました。建物が風の轟音とともに断続的に大きく揺れ、数メートル先も見えないほどの雪が吹き荒れ、南極の気候の恐ろしさを感じました。

数日前は暖かい日が続き、強い風でも雪が降らなかったので基地周辺では土の大地が見えておりました。しかしブリザードの翌日3月2日はあっという間に一面が真っ白で、一部では壁のように雪の吹き溜まりができていました。なお翌日はひな祭りということで、食堂近くに出していた雛飾りを囲んでお祝いを行いました。お雛様が入っていた段ボールには「19次隊」と記載されており、昭和基地で古くから隊員に愛された人形達を室内でしみじみと眺めていました。

ブリザード中の窓ガラス越しの景色
撮影:JARE66 米村幸司(2025年3月1日)
代々受け継がれるお雛様達
撮影:JARE66 米村幸司(2025年3月2日)

3月3日、天候も回復し雲も晴れて、夜には非常にはっきりとしたオーロラを見ることができました。それ以前もぼんやりとしたものは見えていたのですが、この日のオーロラは肉眼でもカーテンのような様が見えるほどとても明るいものでした。空一面に広がっており、刻々と色が変わっていく姿はとても幻想的なものでした。昭和基地は「オーロラ帯」(オーロラが発生しやすい領域)の真下に位置しており、オーロラを観測するのに絶好の場所となっています。また越冬隊が毎年実施しているオーロラのモニタリング観測を行うため「灯火制限」を行っており、自然以外の人工的な光はできる限り防いでいます。そのため基地周辺はとても暗く、なお一層オーロラと星が穏やかな色合いで綺麗に見えます。ブリザードによる厳しい表情とオーロラによる美しい表情を感じることが出来た3月始めとなりました。

昭和基地を囲むように穏やかに揺れている光
撮影:JARE66 米村幸司(2025年3月3日)
広範囲に光が様々な色に広がる
撮影:JARE66 米村幸司(2025年3月3日)

(JARE66 米村幸司)