海底圧力計の回収

南極地域観測隊は毎年、リュツォ・ホルム湾沖にあるSt.BP(ステーション・ビーピー)という位置(南緯66度50分、東経37度50分、水深約4,500m)に「海底圧力計」を設置し、その地点の海底にかかる圧力の変化を連続的に調べています。例年、昭和基地に向かう往路の航海で「しらせ」から投入し、1~2年間海底に設置した後、次隊または次々隊の復路の航海で回収しています。66次隊の往路では2024年12月21日に投入しました。

海底圧力計を海へ投入
撮影:JARE66 北本 憲央(2024年12月21日)

この計測によって、海底の環境にどのような動きがあったかを知ることができます。例えば、潮汐や季節変化などによって生じる海水面の上下変動に加え、水量の増減や水質なども測定することで、海氷の融解の程度や海底地形の動きなど、海底圧力の変動に伴う南極地域の環境への影響についても科学的データが得られるのです。

ただし、このデータを得るためには海底圧力計を回収し、本体から直接データを取り出す必要があります。そこで2月11日、一昨年の12月に65次隊が設置した海底圧力計の回収作業を行いました。

海底圧力計は非常に深いところにあり電波は届かず、海中に投入した音響装置を使い音波信号を送り反応を確かめます。その後、重りの切り離しの指示を送り海底圧力計が海面まで浮上するのを待ちます。(浮上まで約90~120分の時間がかかります)ある程度の位置は把握されているものの、回収の際には浮上した海底圧力計を目視で探す必要があり、観測隊員、「しらせ」乗員に声をかけ、できるだけ大勢の人の目で探します。海底圧力計は無事に見つかり、回収することができました。

(左)音波信号を送受信するトランスデューサーを海へ投入
(右)船上局で海底圧力計からの応答を確認中
撮影:JARE66 北本 憲央(2025年2月11日)
海底圧力計を発見
撮影:JARE66 北本 憲央(2025年2月11日)
しらせ乗員のみなさんで引き揚げ
撮影:JARE66 北本 憲央(2025年2月11日)
無事回収
撮影:JARE66 北本 憲央(2025年2月11日)

この作業を担当した村上隊員は「データの取得が継続できてほっとしています。今日、しらせ乗員、観測隊員のみなさんが協力してくれている姿を見て嬉しく感じました。感謝しています」と語りました。

海底圧力計については、以下の記事も是非ご覧ください。
「暗い海の底で圧力の変動を測る、海底圧力計」https://kyoku.nipr.ac.jp/article/2312

(JARE66 北本憲央)