再びこんにちは。大阪府立三国丘高等学校理科教諭の山本那由です。今回は、1月24日(金)に行った、三国丘高校定時制生徒約100名対象の南極授業を紹介します。この授業では、南極で働く人に焦点をあて、南極では様々な分野のプロフェッショナルがいること、また隊員をゲストに招き、それぞれ仕事をする上で大切にしていることを伝えてもらいました。生徒が授業に積極的に参加できるよう、途中で個人ワークや、〇×問題を取り入れました。〇×が片面ずつ印刷された紙を生徒に配布しておき、生徒の回答が昭和基地側から見られるよう工夫しました。
授業本番は悪天候のため、急遽中継場所を変更しました。管理棟の扉を開けたところで、野島隊員に現在の気温や風速を伝えてもらい、これからの天気予報をしていただきました。この時、風速20m/sの風が吹いており、髪の毛が激しく泳ぎました。ある意味、南極らしい中継ができてよかったです。
管理棟内の中継スタジオに移動中、ペンギンチームに取材を行った時の動画を見てもらいました。その後、個人ワーク「あなたが越冬隊長なら、どんな人を南極へ連れていきますか?」を実施しました。その際、66次越冬隊員4名に仕事着でスタジオにお越しいただき、職業を考えるヒントとしました。
答え合わせを兼ねて、4人の越冬隊員について、それぞれ紹介していきます。
1人目は気象庁の野島隊員。オゾンホールについて話していただきました。仕事をするうえで大事にしていることは「協調性」。越冬隊員31人、みんなで支え合うことが大事と語っていただきました。2人目は調理の横田隊員。厨房から中継で、〇×クイズの出題や、南極でしか食べられないものとして実物の「ショウワギス」を紹介していただきました。仕事をするうえで大事にしていることは「自分がわくわくすること」。自分が何をしている時が楽しいのかを大切にしてほしいと笑顔で語っていただきました。3人目はお魚チーム研究者の黒田隊員。(黒田隊員は釣り竿を持って登場したため、「つり人」と予想する生徒が多かったようです。)ご専門のマイクロプラスチック研究について、説明していただきました。仕事をするうえで大事にしていることは「失敗から考え続ける」。特に南極では物資が限られており、観測機器が壊れてしまうこともあります。そのような環境下でいかに工夫して、困難を乗り切っていくかが大事だと語っていただきました。4人目は環境保全の高妻隊員。環境保全とは、ごみ処理や汚水処理の担当です。動画で、南極で出たゴミはすべて日本に持ち帰ると説明した後、エコステーション(廃棄物集積場)から中継を行いました。〇×問題の出題や、南極のごみ処理は日本の暮らしと通じており、「南極だから特別にきれいにしなければならない」という訳ではないと説明していただきました。仕事をするうえで大切にしている言葉は「成功は必ずしも約束されていないが、成長は必ず約束されている」。人生の大先輩から、定時制の生徒に向けて、心のこもったメッセージをいただきました。
南極観測隊、特に越冬隊は厳しい環境を約30人で生きていかなければなりません。それぞれの隊員に仕事があり、どんな仕事も全員にとって大事な仕事です。最後に、私から「その道には価値がある」というメッセージを送りました。過去・現在・将来、どんな道を歩んでいても、その道には価値があります。私は教員をしていて、まさか自分が南極へ来ることになるとは思いませんでした。その道を懸命に歩んでいれば、いつかは南極へたどり着くかもしれないと、授業を受けた生徒が感じてくれていたら嬉しいです。
南極から授業をするというミッションは、たくさんの方々に支えられ、達成することができました。改めて、協力していただいた隊員の皆様、広報室の皆様、学校の先生方に感謝を伝えます。本当にありがとうございました!
(JARE66 山本 那由)