南極授業①(三国丘高校全日制)「未来につなぐミッション~南極観測の世界~」

こんにちは。大阪府立三国丘高等学校理科教諭の山本那由です。1月24日(金)、三国丘高校全日制・定時制の部、それぞれに実施した南極授業を、2回に分けて紹介します。今回は全日制の部です。全日制の部の対象は、三国丘高校全日制生徒1~3年(約700名)です。生徒にとって未知である南極観測について、魅力や意義を感じてもらえるよう、南極で行われている研究・観測を主軸に、授業を構成しました。工夫として、出演する隊員が話す内容を生徒に深く印象付けるため、画用紙に手書きでメッセージを書いてもらいました。

まずは昭和基地の様子を紹介。管理棟前の19広場(いちきゅうひろば)から生中継をしました。同じく派遣教員である長浦先生に濡れタオルを30回振り回していただき、タオルが凍るか実験を行いました。この時の気温は約-0.5℃。タオルを触ると少し凍っていたものの、タオルが棒のようになることはありませんでした。夏の昭和基地は、生徒の予想に反して、そこまで寒くないということを実感してもらいました。

管理棟内の中継スタジオに移動後、いよいよ本格的に授業が始まります。今回のテーマは3つ、①海洋観測、②気象(オゾン観測)、③ペンギン・魚です。

①    海洋観測

海洋観測パートでは、しらせ往路のモニタリング観測を取り上げました。南極地域観測隊は、毎年東経110度のラインを南下し、南緯40,45,50,55,60度の5地点で採水やプランクトン採集を行っています。まずは動画で、海上自衛隊の支援によるダイナミックな海洋観測の様子や、私が採水を行っている様子などを紹介しました。採れたプランクトンは目で見て明らかに色が異なり、5地点の環境の違いを知ることができます。海洋の二酸化炭素吸収メカニズムの一つである「生物ポンプ」の説明を行ったのち、しらせと中継をつなぎ、真壁隊員に東経110度ラインの特徴、プランクトン画像の機械学習、海洋観測の魅力を質問しました。真壁隊員が考える海洋観測の魅力は「仲間と共に」。様々な分野の研究者とともに大きな謎に挑む面白さを語ってくださいました。この後、原田隊長から三国丘高校の生徒に、「人との出会いを大切に」と大事なメッセージをいただきました。

②    気象(オゾン観測)

気象パートでは、まず動画で、65次越冬隊員からいただいたオーロラなど様々な気象現象や、気象隊員のお仕事の一部を紹介しました。「なぜ日本の上空ではなく、南極の上空にオゾンホールができるのか」についてスライドで説明を行った後、臼田隊員が登場し、南極でのオゾン観測の意義を説明していただきました。
臼田隊員の越冬への意気込みは「正確な観測データを取得し続ける」。仕事への責任感・熱意がよく伝わります。

③    ペンギン・魚

まずはペンギンパートから。ペンギン研究チームに同行取材を行った時の動画を流しました。バイオロギングを用いてどのような研究が行われているか、紹介しました。
 お魚パートでは、昭和基地周辺で見られる魚の紹介や、なぜ南極の魚は凍らないのかを説明した後、お魚チームに同行した時の動画を流しました。その後、リーダーである浅井隊員が本物のショウワギスや観測機器をもって登場。南極で行う魚研究について、内容を説明していただきました。浅井隊員の考える南極での魚研究の意義は、「新発見だらけの魚の世界 “現在”を理解し、“変化”に備える」。分かりやすく、基礎研究の意義を伝えてくださいました。

今回の教員派遣プログラムに参加し、継続して観測を行う重要性や、地球の現在や未来など分からないことを“誰も分からないまま”にするのではなく、“理解しよう”と挑んでいく観測隊の姿を知りました。また、様々な分野のプロフェッショナルと出会え、自分の生きている世界の解像度が一気に上がりました。生徒にはこれから新しい挑戦をして自分の世界を広げてほしい、また私自身も新しい挑戦をしていきたいという想いを「共に世界を知ろう」というメッセージにこめ、授業を締めくくりました。

19広場から生中継。タオルを振る長浦先生と。 
撮影:JARE66 和田 千弥(2025年1月24日)
魚に取りつける発信機を見せる浅井隊員
撮影:JARE66 和田 千弥(2025年1月24日)
心のこもったメッセージ、ありがとうございました!
撮影:JARE66 和田 千弥(2025年1月24日)
編集:JARE66 山本 那由

(JARE66 山本那由)