前回(12月21日)、「しらせ」が流氷域に進入したことをお伝えしましたが、12月24日時点、いまだ昭和基地に向かって航行中です。乱氷帯といわれる海氷同士が二重三重と複雑に折り重なる海域がゆく手を阻んでおり、「しらせ」はラミング※を繰り返して一歩一歩進んでいます。なかなか海氷が割れず難航していますが、「しらせ」乗員の皆さんの尽力で少しずつ昭和基地に近づいています。
※ラミング(ramming):砕氷が困難な場合に一度後進して、勢いをつけて氷盤に乗り上げて砕氷すること。
ラミングによってできた割れ目を一気に進む様子がわかるでしょうか
撮影:JARE66 横田 典恵(2024年12月23日)
ラミング中の散水の様子。船体と海氷との摩擦を低減させる効果があります
撮影:JARE66 大久保 瑠衣(2024年12月23日)
また流氷域に入る頃、「EM氷厚計」(Electro-Magnetic :電磁誘導型)が設置され観測を開始しました。その名の通り、氷の厚さを測定する機器であり、氷で覆われた海をより安全に航行するための貴重なデータを得ることができます。
EM氷厚計について詳しく教えていただきました。
船首側(橙)が送信コイル、船尾側(青)が受信コイルになっており、送信コイルに磁場(一次磁場)を発生させると、その磁場に誘導され、氷の下の(電気伝導度の大きな)海水に電場が生じます。その電場によって作り出された磁場(二次磁場)を、受信コイルが検知することで海水(海氷の底面)までの距離がわかります。同時に、同じ機体に取り付けられたレーザー距離計で、氷の表面までの高さを測定し、海水までの距離を差し引きすることで氷の厚さが求められます。・・・とのこと。な、なるほど。
ただ、ラミング中は押し退けられた海氷が高く盛り上がることで、機体にぶつかってしまう恐れがあるとか。そのため乱氷帯にいる間は、常に交代で見張りながら観測する必要があるのです。
奮闘しているのは「しらせ」だけではありません。
波浪船舶チームへの応援もよろしくお願いします!
(JARE66 北本憲央)