昭和基地でのごみ処理と環境保全

南極地域は人間活動の影響を受けにくく、地球環境のモニタリングなどの観点から南極地域の環境の重要性が注目されています。一方で、基地活動や観光利用の増加による環境影響が懸念されたため、南極地域の環境を保護するために国際条約や国内法で活動のルールが定められており、観測隊員が南極で活動する際はこれらの法を遵守して研究や活動を行っています。

南極生活において切っても切り離せないものの一つ、それは「ゴミ」です。国内だと焼却や埋立、リサイクルなど処理の方法は様々ありますが、南極では環境を守り人間活動の影響をできるだけださないために、「南極地域の環境の保護に関する法律」に則ってゴミを処分しています。基本的には南極で発生したごみは日本に持ち帰ることになります。昭和基地内では各隊員が細かく分類されたゴミ箱に分別して廃棄し、当直にあたった隊員がこれらのゴミを収集して写真のように集積場まで運びます。発生量が多い紙などの可燃ごみは焼却炉で燃やして灰として持ち帰ります。また、調理の際などに発生した生ごみは輸送の過程で腐敗するため、生ごみ炭化装置で「炭」の状態にしてから持ち帰ります。

廃棄物集積場。それぞれの隊員が責任を持ってゴミの分別を行なっています。
撮影:JARE65 山岡麻奈美(2024年10月12日)
焼却炉棟で可燃処理したゴミの灰を回収する様子
撮影:JARE65 津町直人(2024年3月5日)

昭和基地には焼却炉棟という建物があり、その中でゴミを焼却し処理しています。
「南極地域の環境の保護に関する法律施行規則」で定められた基準を守るため、焼却時に黒煙が規定値以上で排出されていないか、定期的に測定し焼却炉の焼却処理能力を検査しています。

排気ガスの検査。頻度は3ヵ月に1度行います。
撮影:JARE65 山岡麻奈美(2024年7月24日)
焼却炉から排出される黒煙を測定する
撮影:JARE65 山岡麻奈美(2024年7月24日)

排ガス測定に関連して、焼却炉棟の黒煙ともうひとつ、検査しているのが発電機の排気ガスです。

生活に必要不可欠な電気は、昭和基地内で発電し賄っています。昭和基地での発電システムには太陽光パネル、風力発電などもありますが、ディーゼル発電機による発電がメインとなっています。ディーゼルを使用した際に出た排気ガスも測定の対象です。

ディーゼル発電機の排ガス測定
撮影:JARE65 山岡麻奈美(2024年7月18日)

排気ガスの検査をするうえでの留意点がやけどです。排ガスは300℃を超える高温であり、南極では医療の限界もあるため、やけどには十分注意して排ガスの検査を行っています。

南極は原生的な自然が維持されている大変貴重な地域で、生態系や環境を維持することが重要です。隊員の生活や活動が南極の環境に影響を与えないように、観測隊員は常に意識して活動を行っています。

(JARE65 山岡麻奈美)