南極と言えば、氷で囲まれた真っ白な世界を思い浮かべませんか。
雪で覆われる冬期間は雪上車やクローラー付きの車が基地内を行き交いますが、実は昭和基地では、夏期間には土が見えます。南極で活躍する車は、雪上車だけではありません。夏期間の昭和基地では、トラック、SUV車、軽トラックといった日本国内でもおなじみの車たちも、南極で大活躍しています。
越冬期間中の重要な業務のひとつに、除雪があります。建物や設備が雪で埋もれてしまわないように日々除雪を実施していますが、人力での除雪は時間も労力も大きく奪われてしまうため、重機を活用して作業を進めることが大切です。また、物資の運搬においても、重機類は大きな役割を果たしています。
南極で働く圧雪車は、南極仕様に改造されています。一般的に車両は気温が下がるとエンジンがかけられなくなることが多々ありますが、南極仕様の車両は、-30℃まで気温が下がってもエンジンがいつもどおりにかけられるそうです。
基地活動に大きな貢献をしてくれる車たち。重機類が安全に機能するように、車両をメンテナンスしてくれている隊員がいます。
車両整備では、オイル交換、足回りのベアリング交換、前回のドーム旅行で出た不具合の点検修理などを実施します。劣化したエンジンオイルを交換しないまま運転を続けていると、エンジンそのものもダメージを負っていくため、定期的なエンジンオイルの交換は不可欠です。また、エンジンオイルの交換だけではなく、雪上車は車重が重いため、足回りの点検やベアリング交換なども欠かせません。
自然エネルギー棟内での作業。圧雪車における減速器の中のブレーキとベアリングの交換
撮影:JARE65 山岡麻奈美(2024年11月6日)
圧雪車は、観測物資や燃料、食料が載った橇などを曳いてドームふじ観測拠点Ⅱに向かう予定です。昭和基地で車両メンテナンスを行う場合には、自然エネルギー棟と呼ばれる建物に車両を持ち込み、修理の対応にあたることができますが、ドーム旅行中に車両に不具合が生じた場合には-20℃以下の屋外でしか修理が出来ません。63次隊、64次隊とドームふじ観測拠点Ⅱでの活動に参加経験のある雪上車担当の鶴野隊員は、修理するのに冷えた鉄を触るしかないが、手袋をすると細かい作業ができないため、寒さと戦いながら修理するしかないと話します。さらに、車両整備で日本国内と異なる点は、故障の際に昭和基地に部品が無いと修理が出来ず、その部品は次の隊が来るまで手に入らないことです。
車両や重機は、除雪や荷物の運搬といった屋外作業の多い南極において大きな力を発揮する半面、安全面の観点から、慎重に取り扱う必要があります。車両のメンテナンスや管理においては、除雪などで動いている車両を外からでも音など気にする、作業で車両を使い終わった人に挙動などがいつもと違った点がなかったか確認する、不安に思った箇所があればすぐに確認点検することなどを、意識していることとして教えてもらいました。
整備を終えた圧雪車が昭和基地で活躍する姿が見られるのも、あと少しです。
(JARE65 山岡麻奈美)