10月27日、第50回衆議院議員選挙が行われました。みなさん、選挙には行かれましたか?
ここ昭和基地でも、衆議院議員選挙および最高裁判所裁判官国民審査の投票を行いました。
南極からの投票は、公職選挙法に定められた不在者投票制度のひとつで、国政選挙のみが対象となります。また、選挙権を持つ隊員であっても、南極での投票を希望する隊員は、日本を出国する前に、あらかじめ選挙人名簿に登録されている市町村の選挙管理委員会に対して「南極選挙人証」という書類の交付を申請する必要があります。南極選挙人証が交付されると、隊長名義で、総務省令で指定された選挙管理委員会(今回は、東京都の中央区選挙管理委員会)に対してFAXによる投票に用いる「投票送信用紙」の交付を請求します。交付された投票送信用紙等は日本から昭和基地へ持ち込み、厳重に保管しておきます。そして、南極地域滞在期間中に選挙期日が公示されると、保管していた書類を開封して投票が実施される、という流れになります。
10月23日と10月24日の2日間にかけて、南極・昭和基地で投票が実施されました。不在者投票管理者の行松越冬隊長から、選挙人の各隊員に、投票送信用紙を交付します。投票は国内での投票と同様に、小選挙区・比例代表・最高裁判所裁判官国民審査の3件の投票をすることができます。
投票所は、昭和基地内にある通信室に設置しました。投票所でおなじみの専用の投票記載台は昭和基地にはありませんので、昭和基地にある什器を用いて、周りの目に触れない動線になるよう、留意しました。また、投票用のFAXは1台しかありませんので、時間差で一人一人投票します。
投票の流れは、以下となります。
1. 隊長から投票送信用紙(小選挙区・比例代表・最高裁判所裁判官国民審査各1枚ずつ)の交付を受ける
2. 投票所で、投票送信用紙の投票記載部分に記入
3. FAXで1枚ずつ、中央区選挙管理委員会宛に投票送信用紙を送信
4. 投票送信用紙の切り取り線に沿ってハサミでカットする
5. 投票部分を指定の封筒に入れ、糊付けして封をする
6. 必要事項記載部分を封筒の表面に貼り付ける
7. 隊長に投票部分の原本が入った封筒を提出して、投票終了
南極からの投票と国内での投票で異なる点は、投票にかかる作業工程が多いことです。投票送信用紙をFAXで送信して終わり、ではありません。投票送信用紙をハサミでカットし、投票記載部分を指定の封筒に入れると、帰国後に指定選挙管理委員会に提出する必要があります。また、FAXで送信した投票送信用紙は、指定選挙管理委員会から選挙人の居住する都道府県の選挙管理委員会へと郵送され、集計されます。
候補者や政党に関する情報は、国内であればテレビや新聞、街中の演説やポスター等で入手できますが、昭和基地での情報源はインターネットのみです。情報源は限られているものの、南極から投票できることにありがたみも感じました。
南極から投票するためには複雑な手続きが必要ではありますが、一票を投じることの重みを感じる貴重な経験となりました。
(JARE65 山岡麻奈美)