携帯電話が使えなければ?

昭和基地では、日本国内とは違い携帯電話の基地局が整備されているわけではないので、携帯電話で通話することはできません。観測隊では、隊員同士の連絡を取り合う手段として携帯電話ではなく携帯型の無線機による無線通信を行っています。

南極での活動は危険と隣り合わせ。事故に遭ったら無線通信で助けを呼ばなければ誰にも来てもらえません。よって、隊員は入浴時間、就寝時間を除いて常に無線機を携帯することとされています。また、夜中でも怪我や事故などの連絡が入るかもしれないので、昭和基地では24時間いつでも無線通信を待ち受ける体制を整えています。

無線通信は昭和基地内だけではなく、野外活動に出るチームとの連絡においても重要な役割を果たしています。チームが外泊する場合には毎日決められた時間に無線通信を行い、昭和基地に最新の気象情報や隊員・車両・装備の状況を報告するとともに、翌日の行動予定を共有しています。これを観測隊では「定時交信」と呼んでいます。

野外活動チームとの定時交信の様子。
隊員は通信室に集まり、野外で活動する隊員たちの元気そうな声に耳を傾ける。
定時交信の内容は国内にもすぐに共有される。
撮影:JARE65 山岡麻奈美(2024年10月18日)
南極大陸上のS16で定時交信を行う野外活動チーム。
人員・装備・車輛の異常の有無や当日の行動内容、翌日の行動予定等を昭和基地に報告する。
撮影:JARE65 寺﨑康展(2024年10月18日)

衛星回線を導入した現在の昭和基地では、インターネットやテレビ会議の利用も可能になりましたが、屋外の活動では、今なお無線通信は隊員たちの命綱となっています。

雪上車の無線設備を点検する通信担当の渡邊隊員。
長期の野外活動に出る前の点検は欠かせない。
撮影:JARE65 山岡麻奈美(2024年9月6日)

(JARE65 山岡麻奈美)