9月上旬から中旬にかけて、汚水処理棟の屋根を修繕する建築隊員の姿がありました。8月末、昭和基地にA級ブリザード(※)が襲い、破損してしまった屋根を修繕するためです。
越冬隊には、建築隊員は1人しかいません。修復に必要な資材の選定、寸法の測定、材料の切り出し、屋根への取り付けに至るまで、時に他の隊員の協力を得ながらも全て建築隊員が取り仕切り実施されました。
※A級ブリザード…視程100m未満、風速25m/s以上の状態が6時間以上続いたブリザードのこと。
汚水処理棟は1986年、第27次隊の時に建設されたものです。およそ40年近く、南極の厳しい自然のなかで耐えてきたこの建物も、経年による劣化は避けられません。
修繕作業にあたり大量の木材が必要になりますが、ここは資源の限られた南極。後次隊になるべく汎用性の高い材料を残せるように、用途の限られた資材から優先的に利用するように工夫している、とのことでした。
およそ2週間にわたり、連日マイナス20℃を下回るなか、寒空の下で1人黙々と修繕作業にあたる建築担当の松本隊員の姿は、基地の維持管理において建築隊員がいかに重要な役割を担ってくださっているかを思い知らされました。建築隊員は1人だけ、資源も限られている状況下での連日の屋外作業…自分だったら途方に暮れてしまいそうな状況だと感じましたが、松本隊員は穏やかに「世界一美しい景色の中でお仕事させてもらっています」と笑って話してくれました。
9月13日、屋根の修繕作業は終了し、65次越冬隊の活動に支障をきたすことなく無事に復旧しました。現在国立極地研究所の隊員室で勤務中の66次建築隊員とも情報を共有し、今後は66次隊が補強材を持ち込み、補強作業を実施する予定です。作業の様子を見学させてもらい、この汚水処理棟が、10年後も20年後も変わらぬ姿で機能し続けるようにと修復にあたる建築隊員の気概が伝わってきました。
屋根や壁に守られ、厳しい環境下で隊員たちが安心して観測活動や基地生活を営んでいけるのも、こうして建物を維持管理してくれる建築隊員の存在があってこそなのだと強く感じました。
(JARE65 山岡麻奈美)