食卓を彩る新鮮な野菜

以前ブログで、昭和基地への食料の輸送は、南極観測船「しらせ」で行われる年1回の輸送のみであることをお伝えしました。調理隊員が工夫を凝らして食事を提供してくれるため、昭和基地での食事は基本的には日本にいるときと大きく変わりませんが、肉類、魚類、野菜類の多くは冷凍品です。

それでは新鮮な野菜が全く食べられないかというと、そうではありません。実は、昭和基地にはグリーンルームと呼ばれる施設があり、水耕栽培装置を用いて野菜を栽培しています。

昭和基地内のグリーンルーム。様々な作物が栽培されている。
撮影:JARE65 山岡麻奈美(2024年9月12日)

「環境保護に関する南極条約議定書」や「南極地域の環境の保護に関する法律」により、近年は南極への土壌の持ち込みは禁止されているので、土を耕して育てる野菜は作ることはできません。ただし水や肥料だけで作れる水耕栽培であれば、食用かつ少量に限り、環境省の許可を得たうえで種子を持ち込んで育てることができます。

現在利用している水耕栽培装置は2008年に持ち込まれ、現在も問題なく稼働しています。何を栽培するかは隊によって様々ですが、65次越冬隊ではサンチュ・リーフレタス・豆苗・カイワレ・わさび菜・小松菜・ピーマン・野沢菜・きゅうり・えごま・大葉・バジル等、約40種程度の種を持ち込み、栽培しています。

この日は、リーフレタス・ピーマン・きゅうり・ししとうを収穫しました。
「愛情を込めれば込めるほど、すくすく育っていきます」と笑顔で話す田端隊員。
撮影:JARE65 山岡麻奈美(2024年9月3日)

収穫された野菜は南極では手に入らない新鮮な野菜ですので、基本的には熱を通さず、サラダや彩として添えられることが多いです。シャキッとした食感は新鮮な野菜ならではのもの。越冬中の食卓に並ぶたび、隊員は大変喜んでいます。

新鮮な野菜は彩りを添える。
大葉とおろしでさっぱりといただく和風ハンバーグ。
撮影:JARE65 松本巧也(2024年9月7日)
リーフレタスのシャキシャキした食感が嬉しい。9月13日の朝食。
撮影:JARE65 松本巧也(2024年9月13日)

(JARE65 山岡麻奈美)