雪からつくる生活水

「南極で水はどうしているのですか?」南極教室で生徒さんから、質問いただくことがあります。昭和基地で生活水はどうやって造られているのか、担当隊員に教えてもらいました。

昭和基地で越冬期間中に使用する水は、発電棟横に設置した130キロリットル水槽に自然に吹き込む雪を融かしてつくられています。この水槽の水は、ディーゼルエンジン発電装置から供給される余熱を利用して、循環させて凍結を防いでいます。

基地で日常的に使用する水は、上水と中水の2種類の水があります。
飲料水、風呂、洗面などに使用する水を上水といいます。逆浸透膜浄水器でろ過してほとんどの細菌と不純物を除去した水で、日本の水道と同様に塩素で消毒を行っています。上水は1分間で4リットルほどしか造水することができませんので、昭和基地では水は大変貴重です。隊員たちは日々節水に努めています。

発電棟1階に設置された逆浸透膜浄水器。この機械で造水しています。
撮影:JARE65 山岡麻奈美(2024年8月19日)

このように上水として造水できる水の量には限りがあるため、簡易フィルターでろ過した水を中水と呼んで、直接口に入ることのない、主にトイレの流し水や洗濯水などに利用しています。

また自然に吹き込む雪の量が水の使用量に追い付かず、130キロリットル水槽の水かさが減ったときには、設備担当の隊員を中心に水槽に雪入れをし、適正な貯水量を確保しています。

貯水量を確保するための、130キロリットル水槽への雪入れ。
奥の赤い建物が発電棟です。
撮影:JARE65 山岡麻奈美(2024年8月7日)

設備担当の今西隊員。昭和基地でも、蛇口をひねれば綺麗な飲料水が出てきます。
コップ1杯の水を飲む際も、感謝の気持ちを忘れずに。
撮影:JARE65 山岡麻奈美(2024年8月19日)

昭和基地では、普段使用している電気も水も、毎日顔を合わせる隊員が作ってくれています。
日本でも南極でも、蛇口をひねると透明な水が出てきたり、電気がつくことが当たり前に感じてしまいますが、こうした生活インフラを支えている方々がいるおかげで成り立っている生活なのだと、改めて感じました。

(JARE65 山岡麻奈美)