南極の空と大気を観測する

みなさんは予定をたてるとき、天気を気にしますよね。週末はお出かけする予定だから、晴れて欲しいな。明日は雨だから、ゆっくり家で過ごそう。お天気アプリなどで、天候を確認されているのではないでしょうか。天気の見通しは、私たちの生活に大きく影響するものです。
ここ昭和基地でも、空と大気を観測して、日々の天気解析に貢献してくれている隊員がいます。

65次越冬隊27名のうち、6名は気象庁から派遣されている隊員です。
5名は気象観測、1名は地磁気観測やオーロラの観測を担当しています。今回は、気象観測のひとつ、地上気象観測についてご紹介したいと思います。

地上気象観測には、大きく分けて観測機器による自動観測と、人が目で見て観測する目視観測があります。気圧、気温、相対湿度、風、積雪、全天日射量、日照時間は自動観測、雲、視程、天気、その他の大気現象は目視観測です。

目視観測の様子。大気の諸現象の移り変わりや雲量、視程を観測します。
撮影:JARE65 山岡麻奈美(2024年8月10日)

南極と日本での観測方法は基本的には大きく変わりません。ただし、日本国内では気象レーダーや気象衛星等による観測を利用して総合的に大気の状態を把握することができるようになり、目視観測の多くは自動化されています。一方で、南極では今も気象隊員が交代で目視観測を行い、大気の諸現象の移り変わりやその時々の雲、視程の観測をしています。これらのデータは気象庁のHPにも掲載されています。

こういった昭和基地での気象観測データは、世界に向けて即時的に通報を行っており、気象予報のための初期値データとして活用されているだけでなく、昨今では東南極での温暖化の状況に関する研究への貢献も期待されます。

昭和基地では第1次隊から地上気象観測を実施しており、蓄積されたデータが近年では気候の長期的変化をモニターする意味でも役立っています。また南極は観測地点が少ないこともあり世界気象機関(WMO)の枠組みの中にある地上観測網に昭和基地も選ばれています。今後の課題として、これまで困難とされていた昭和基地での降水量の観測を目指し、64次隊から観測機器を設置し、そのデータ解析を行うなど、試行錯誤を重ねています。

携帯用通風乾湿計を用いて、百葉箱内の湿度計・温度計が正常に機能しているかの点検をしています。
撮影:JARE65 山岡麻奈美(2024年8月10日)
前日の気象観測データを確認中。
撮影:JARE65 山岡麻奈美(2024年7月29日)

昭和基地では屋外作業も多く、日々の作業は天候に左右されます。作業スケジュールを組み立てる際に、天気の見通しは非常に重要な情報です。65次越冬隊では、夕方に全員参加のミーティングを行っており、毎日気象隊員が最新の気象情報を隊員に向けて周知してくれています。
気象隊員の天気解析は、観測隊が南極で活動するにあたり、なくてはならないものです。


(JARE65 山岡麻奈美)