南極地域観測事業では第Ⅹ期6か年計画に基づいて、昭和基地から約1,000km離れたドームふじ観測拠点IIでのアイスコア深層掘削が66次夏期オペレーションより本格的に開始される予定です。ドームふじ観測拠点IIへは、南極大陸上のS16という地点から雪上車で観測機材や燃料、食料などを積んだ橇を曳いて向かいます。これを「ドーム旅行」と呼んでいます。私たち65次越冬隊からも一部の隊員がドーム旅行に参加する予定で、参加隊員だけではなく、越冬隊全体でこのオペレーションのためのさまざまな準備を進めています。
7月9日から11日にかけて65次夏期のドーム旅行で使用した車輌・橇を一時置きしているS16から昭和基地に持ち帰るオペレーションを行ってきました。基地で66次のドーム旅行に備えて整備や荷積み、廃棄物処理を行うためです。
昭和基地からS16まで約35kmの行程ですが、雪上車は時速10km程度での走行のため、約5時間かけて行きます。昭和基地は東オングル島という島にあり、南極大陸までは海氷上を渡っていかなければいけません。海氷上を雪上車が安全に通過することが可能であるか、氷厚を測定しながら進んで行きます。海氷から大陸に上陸する手前にも細心の注意を払う必要があり、潮の満ち引きによってできる割れ目、タイドクラックにはまらないように注意しなければなりません。南極大陸に上陸してからは約20km白い氷と空の間を進んで行きます。
S16に到着してからは、キャンプ体制を設営します。雪上車は移動手段だけでなく、生活をするための車輌にもなります。食事は昭和基地であらかじめ調理隊員によって調理され、冷凍真空パックされた料理を湯煎で温めていただきます。夜は雪上車の中で寝袋にくるまり寝ます。
キャンプ体制を設営してからは、-30℃の中、雪に埋もれた車輌や橇を掘り出していきます。橇には今年の65次夏期オペレーションのドーム旅行で使用した燃料が入っていたドラム缶やゴミが搭載されていて、昭和基地に持ち帰り処理します。
過酷な環境での作業を終え、昭和基地に帰る途中、周りに視界を遮る建物や樹木がないため、遠くからも昭和基地の光が見え、お家に帰るような安心感を抱きました。11月出発予定のドーム旅行にむけて、越冬隊員力を合わせ、安全に注意し、車輌・橇の整備や資機材の準備をしていきます。
日本では今年も猛暑で40℃に達したようですが、同じ地球上でも南極との気温差が70℃以上もあることに地球の大きさを実感します。
日本の皆様、熱中症にはお気を付けください。ご安全に!
(JARE65 小田有哉)