南極の大気を採取

モニタリング部門の岩波隊員が、大気サンプリングを行っていました。南極の大気を採取し、持ち帰るための作業で、月に2回の頻度で実施しています。

このサンプリングで採取された南極の大気は、国内に持ち帰って、温室効果気体(メタン(CH4)、六フッ化硫黄(SF6)、二酸化炭素(CO2)、亜酸化窒素(N2O))の濃度やその同位体比、関連する成分を測定するために使用されます。CO2の同位体比を測定する前の処理として、採取した大気試料中のCO2だけを抽出する必要があり、そのCO2抽出処理も昭和基地で行っています。

大気サンプリングの様子
撮影:JARE65 山岡麻奈美(2024年5月14日)
モニタリング(気水圏)隊員は複数の大気サンプルを採取しています。
こちらは2700ccのフラスコに南極の大気をサンプリングしている様子。
撮影:JARE65 山岡麻奈美(2024年5月14日)

社会的な問題となっている地球温暖化に対応するためには、温室効果気体がどれだけ大気に放出され、どれだけ地球表層に吸収されているか、地球表層における温室効果気体の循環を定量的に把握する必要があります。人為的影響の少ない南極域で採取した大気中の温室効果気体の濃度変動を長期的に把握することは、地球規模の環境変化を検出・評価するために極めて重要であり、国際的・社会的にも大きな意義があります。

この他にも、一部の大気試料は特定の成分の分析を目的とせず、昭和基地の大気を長期保存するために採取しているとのこと。これは、現時点では十分な測定精度で計測することができない大気成分でも、将来高精度で計測することが可能になった時に過去に遡って分析することを可能とするために備えているそうです。

全球的な大気環境の変化を捉えるためには、途絶えることなく、継続して観測することが重要です。それとともに、次の隊に大気サンプリングの手法を確実に引き継ぐことも大切だと、岩波隊員が語ってくれました。

(JARE65 山岡麻奈美)