南極の蜃気楼

南極では風のない晴れた日に蜃気楼(しんきろう)が見えることがあります。地表面(海面)の温度が低く空気の密度が大きくなると、光の屈折により蜃気楼が現れます。数分で終わってしまうこともあれば、出たり消えたりして半日以上続くこともあります。日本でも夏になると「逃げ水」といって、風がなく晴れた夏の暑い日にアスファルトの道路などで遠くに水があるような現象を見かけますが、これは下位蜃気楼の一種で、アスファルトに接した空気が熱されて空気の密度が低くなると発生します。

5月9日は気象条件が整い、蜃気楼を見ることができました。昭和基地北側の氷山が浮かんでいるようです。非日常の生活が日常になりつつありますが、氷と光が織りなす美しい現象は、私を新鮮な気持ちにさせてくれました。

 
5月9日の蜃気楼。水面反射の逆さ氷山と蜃気楼で氷山の一部が伸びているところがあります。
撮影:JARE65 奥谷椋一(2024年5月9日)

 5月9日は14時30分に気象庁のオゾンゾンデ観測が実施され、この日誕生日の小笠原隊員が見学に来ていました。オゾンゾンデ観測については、今後観測隊ブログでご紹介します。

大きな気球と特別な観測機器を用いるオゾンゾンデ観測準備の様子。
(左写真)観測機器をもって準備している奥谷隊員(左)と見学に来た小笠原隊員(右)。
(右写真)大きなゴム気球を前に笑顔を見せる小笠原隊員
作成:JARE65 齋藤樹(2024年5月9日)

南側に目を向けると、ピンクと紫の美しいビーナスベルトが広がっていました。雄大な景色の中にある人工物を見ると、これまで昭和基地で南極観測を維持してきた隊員の歴史や足跡を確かに感じます。

基本観測棟から基地主要部を撮影。雲一つない空にビーナスベルトが広がる。
撮影:JARE65 齋藤樹(2024年5月9日)

食堂に行くと調理担当の髙木隊員が小笠原隊員リクエストの誕生日プレートを腕によりをかけて作っていました。手すきの隊員も盛り付けや配膳を手伝います。美味しい食事はおなかだけではなく心も満たしてくれます。

夕食準備をする食堂の様子。手すきの隊員も盛り付けや配膳を手伝います。
 撮影:JARE65 齋藤樹(2024年5月9日)

(JARE65 齋藤樹)