4月25日は「世界ペンギンの日」。南極にあるアメリカの観測基地、マクマード基地にアデリーペンギンが毎年4月25日前後に姿を見せることから、制定されたと言われています。
12月下旬に昭和基地に到着してから、何度か基地内でアデリーペンギンを見かけました。
アデリーペンギンは南極の短い夏に合わせて繁殖するようで、到着直後には十数羽の群れがやってきたこともあります。
3月上旬、1羽のアデリーペンギンが昭和基地の私達が暮らす居住エリアのすぐ近くにやってきました。これまで見たアデリーペンギンと異なる様子で、じっとして殆ど動きません。最近は鳥インフルエンザの南極大陸への上陸が確認されたり、他国の南極観測隊により大量の死骸が発見されたりなどの報告もありましたので、隊員達はとても心配しました。病気だとかわいそうとの気持ちになります。また、南極環境保護法により調査以外の目的では近づくことは禁止されていますが、万一鳥インフルエンザがヒトに感染した場合は致死率が高いとも考えられているのです。しかし、幸いなことに、ちょうど「換羽期」と呼ばれる羽の生え替わりの時期だとわかり安堵しました。岩陰に身を潜めて猛吹雪もやり過ごしつつ、食事も一切摂らずに佇んでいる様子に、隊員達は皆、離れた処からがんばれ!と見守っていました。愛称もつけられて、65次隊の中ですっかり人気者になったことは言うまでもありません。
鳥の羽毛は生きた細胞ではないため、汚れたり破損しても自己修復はしません。時間の経過とともに撥水性も保温性も低下していくため、アデリーペンギンは1年に1度古い羽毛を脱ぎ捨て、新しい羽毛を身にまとう「換羽」を行います。換羽中は新旧の羽毛が混じった中途の状態にあるため撥水性、保存性が完全には維持されず、海に入ってしまうと体温を奪われて死んでしまうそうです。そのため、陸上にとどまったまま、換羽が終わるのをじっと待ちます。
南極と聞いて真っ先にイメージするもののひとつに、ペンギンが挙げられると思います。
昭和基地に到着した直後は「ここは本当に南極?」と感じた瞬間もありましたが、アデリーペンギンの姿を見た時に、「自分は南極にいるのだな」と実感したことを覚えています。
過去には昭和基地にコウテイペンギンがやってきた年もあったようです。65次隊の越冬中に、コウテイペンギンも昭和基地に遊びに来てくれたらいいな…とほのかに期待をせずにはいられません。
(JARE65 山岡麻奈美、福本新二、行松彰)