レスキュー訓練

昭和基地は東オングル島と呼ばれる島の上にあるため、観測や設営作業で島外に出かけるときは、必ず海氷上を移動することになります。海氷上には海氷の割れ目(クラック)、海氷表面の水溜まり(パドル)といった様々な危険が潜んでおり、足元には水深数百メートルの海が横たわっていることを常に意識し、行動する必要があります。
また、大陸上には氷河の割れ目(クレバス)なども潜んでおり、日本とは異なる特殊な環境での行動となりますので、観測隊では海氷安全講習をはじめとする各種講習を行い、安全第一で活動しています。
万一、事故が発生し救助が必要になった場合には、越冬隊員27人で助け合うことになります。そのため、越冬隊の中に、レスキュー本部とレスキュー隊から成るレスキュー体制を整え、野外活動中の非常事態に対応できるよう備えています。

越冬開始後、レスキュー隊向けの訓練が行われてきましたが、この度、誰でも非常時に対応できるように、越冬隊員全員を対象としたレスキュー訓練が実施されました。今回のレスキュー訓練では野外観測支援担当の山岸隊員を中心にレスキュー隊も講師となり、クレバスや崖の下に落下した要救助者を救助するための懸垂下降、自力で這い上がってくるための自己脱出訓練、クレバスからの引き上げ訓練などが行われました。

アイススクリューの使い方を説明する山岸隊員(手前)。
崖の下に落下した要救助者を引き上げる際に、ロープをかける支点を作るために使用する道具です。
撮影:JARE65 山岡麻奈美(2024年4月10日)
崖の下に落下した要救助者を助けに行く想定で、懸垂下降の訓練をする様子。
3mほどの崖ですが、ロープ1本に身を預け下降するのは、なかなかの恐怖でした…
撮影:JARE65 山岡麻奈美(2024年4月10日)
こちらはクレバスや崖から落下した際に自己脱出するための訓練です。
コツを掴めば力を使わずに登れるそうですが、慣れないと変に力が入ってしまい、
苦戦する隊員の様子も見られました。
撮影:JARE65 山岡麻奈美(2024年4月10日)

「越冬期間中は外部からの助けが来ないので、自分たちの身は自分たちで守ることになる。事故が起きないのが一番だが、万が一何かあったときにすぐに対応できるよう、備えておくことが大事。」と、講師の山岸隊員が話してくれました。

ルート工作も始まり、65次隊ではこれから南極大陸をはじめとする野外に出かける機会が増えます。レスキュー体制を発動させることのないよう、安全に気を付けて行動していきたいと思います。

(JARE65 山岡麻奈美)