昭和基地は南極大陸から約4km離れた東オングル島という島の上にあるため、越冬期間中に南極大陸や周辺の島々で観測などを行う際には、海氷上を移動しなければなりません。海氷上にはタイドクラック(海氷の割れ目)や氷厚が薄いところなど多くの危険が潜んでいます。そのため、目的の場所まで安全に移動できる道(ルート)を作る必要があります。今回は4月8日に、65次隊で初めて実施したルート工作の様子を紹介します。
今回の目的地は、昭和基地のある東オングル島のお隣、西オングル島です。西オングル島には、宙空部門の観測施設である、「西オングル島 宙空テレメータ施設」があります。そこでは、宇宙から放射される電波などの観測を行っています。越冬期間中、観測機器のメンテナンスなどで訪れることがあるため、ルート工作を行いました。
当日、朝の最低気温は-20℃と極寒の中でルート工作が始まりました。ルート工作では、過去の隊によって作られたルートを参考に、スノーモービルで移動しながら、約500mおきにドリルで海氷に穴を空けて氷厚を測定します。十分な氷厚であることが確認できた地点には、旗を立てて安全であるという目印にします。また、GPSを使って緯度経度を測定し、位置を記録していきます。これを目的地まで繰り返してルートを作り上げていきます。
午前9時に昭和基地を出発し、2時間ほどで西オングル島に到着しました。無事にルートを作りあげることができ、参加した隊員は安堵の表情を浮かべていました。また、西オングル島に初めて上陸した隊員は、普段とは少し違う景色に新鮮さを感じていました。
今回のルート工作では、野外観測支援担当の山岸隊員をリーダーに、宙空隊員2名、機械隊員2名、医療隊員1名の計6名で行いました。途中、タイドクラックや氷厚の薄いところなど危険が予想されるところもありました。しかし、山岸隊員の的確な判断や指示によって、順調にルート工作を進めることができ、無事に西オングル島までのルートを作成することができました。
(JARE65 屋良朝之)