あともう少しでフリーマントル港

南極観測船「しらせ」は3月14日16時現在、南緯47度付近を復路北進中です。フリーマントル港にどんどんと近づいて、気温もこの数日で一気に上がっていますが、まだ1700km程の行程を残しています。なお暴風圏の勢いは往路よりも穏やかで、どうやら船酔いせずに通過させてくれそうな様子です。とはいえ船外は20m/s以上の強風が吹いていて丸一日以上船上に出ることができず、また船窓からは海上に霧が掛かって水平線も見通せない様子が続いています。

南緯50度での定点観測中、濃霧が「しらせ」を覆いました。
撮影:JARE65 丹保俊哉(2024年3月13日)

「しらせ」と南極地域観測隊は、音響測深機を使った海底地形調査を続けつつ明日、明後日と停船し、海洋観測を行う予定です。南極観測隊ではインド洋と南極海を航海中に、長期的な海洋環境の変動をモニタリングすることなどを目的に毎次、東経110度線に沿って緯度5度間隔での定点にて海洋観測を実施しています。とはいえその全ての観測を滞りなく実施できるという訳ではなく気象海象の状況次第なため、今次では南緯55度での観測はスキップせざるを得ませんでした。過去64回も繰り返して得た知識や経験を以ってしても、手を伸ばせば簡単に成果を得られるものではなく、やはりここでも南極観測事業の難しさ、ままならなさが表れます。

定点観測にて投入したNORPAC(北太平洋標準)ネットは揚収後にネット外側から海水を丁寧に掛けて、捕獲したプランクトンを網の末尾に集めて全て採集します。
撮影:JARE65 丹保俊哉(2024年3月13日)
濾水計を読み取って記録している様子です。ネットを透過した海水の量を調べてプランクトンの分布密度を算出します。撮影:JARE65 丹保俊哉(2024年3月13日)
CTDでは採水ができない海面の海水は、バケツを使って舷側から直接くみ上げます。
撮影:JARE65 丹保俊哉(2024年3月13日)

64次越冬隊、65次夏隊の日本帰国まで残り1週間を切りました。残りの定点観測や海路の無事を願いつつ、家族の待つ日本へ笑顔で元気に帰り着くことが出来るよう、緩みがちになる気持ちを新たにして最後まで安全を心掛けてまいります。

(JARE65 丹保俊哉)

復路航海中に、南極へ出発前に治療済みだった歯の歯根から歯茎へ細菌が入って炎症を起こしてしまいました。お陰で?船の中で歯科治療を行っていただくという貴重な経験を得ることが出来ました。撮影:JARE65 南迫勝彦(2024年3月9日)