南極授業 〜極地と広島から考える Well-being〜

教員南極派遣プログラムで65次隊に参加している広島県立広島叡智学園中学校の南迫です。130日に昭和基地と学校をつないで、南極授業を行いました。テーマは「平和な社会づくりの実現に向けて〜極地と広島から考えるWell-being〜」です。私の南極派遣が決定した2023年6月末から、生徒達と共に、南極の地理的なあらましを調べたり、白瀬矗の生き方から「真理の探究」とは何かを考えたりしました。多角的な観点から南極を捉えるために、弁護士の方を招き、南極条約の可能性について考えたり、65次隊越冬隊の小田有哉隊員を招き、南極で働くことの意義や価値について対話したりもしました。

南極条約の可能性について弁護士の方から説明を受ける生徒
撮影:JARE65 南迫勝彦(2023年10月26日)
小田有哉隊員と記念撮影
撮影:広島県立広島叡智学園中学校(2023年11月7日)

南極授業前半部分では、観測隊の方から生徒に向けて話をしていただきました。建築・土木の現場監督である槇田英剛隊員からは、現在工事が行われている新夏期隊員宿舎の工事計画や、極地で働くことと日本で働くことの違いについて、研究観測の田中智隊員からは、月の観測事業と南極の観測事業との関連性、ペネトレーターという探査機材で行う観測の意義や価値について説明していただきました。

極地における設営や観測の意義や価値について説明する槇田英剛隊員と田中智隊員
撮影:JARE65 丹保俊哉(2024年1月30日)

授業後半部分では、広島叡智学園中学校3年生の尾﨑さくらさん、鍋加明希さんが地域の児童を対象に行った南極に関するワークショップの実践報告を行ないました。白瀬矗や南極条約の内容をまとめた紙芝居を読み聞かせたり、南極の氷を画材に使ったフォトフレームを一緒に制作したりする活動を通して、自然環境の大切さ、科学の興味を引き出すことを目的としたワークショップでした。実践報告を聞いた観測隊の方々からは、発展的かつ持続的な活動に向けたフィードバックをいただきました。

授業後の生徒達の振り返りの中には「極地でも大切な人を想う」「人類の手が及んでいない本物の自然」「信念、軸を持ってMissionを完遂する」「コミュニティの新たな形を創造する」「日常にユーモアを」「いつまでも冒険心を忘れない」「未開の地への挑戦」など、観測隊の方々との対話から抽出されたエッセンスとWell-beingとの結び付きが綴られていました。

南極授業終了後の集合写真
撮影:国立極地研究所広報室(2024年1月30日)

今回の授業が、生徒達の世界観を広げ、より豊かな人生を歩んでいけるきっかけになったのであれば幸いです。

次年度からは、私が南極で体験し、学んだことを生徒達と共に地域に還元する活動をしていきたいと思います。

(JARE65 南迫勝彦〈広島県立広島叡智学園中学校〉)