12月26から29日の日程で、昭和基地から南南西に約100km(輸送ヘリコプターCH-101に搭乗すること約30分)の位置にある、ルンドボークスヘッタ(ノルウェー語で丸い湾)という場所で行われた野外調査に同行取材しました。(地理院地図からの位置確認はこちらから)
ルンドボークスヘッタはリュツォ・ホルム湾東岸、宗谷海岸に分布する露岩域の一つです。ヘリから降り立った地面は、土壌の類がわずかな面積でぽつぽつ点在する程度で、見渡すばかり岩肌が直接露出し、極めて肌理の粗い紙やすりのような質感をしていて大根がおろせそうなくらいです。
その岩肌に片麻岩の特徴であるストライプ模様がぐにゃぐにゃと不規則に波打ちながら延々と続く様子が表れていて、ときにはそれが強い力で折りたたまれたように見えるところもあり、ゴンドワナ大陸の時代まで遡るこの地域の成り立ちに大変興味をそそられますが、今回随行したチームの調査対象は海氷です。
昭和基地に入ってからの6日間、不自由ながらも快適な宿舎で過ごし基地の活動について見聞した内容をブログにしたためてきましたが、いよいよ南極大陸そのものに足を踏み入れることになり、否が応でも期待感が高まる一方、南極観測の意義や目指していることを自分なりの言葉で伝えることが出来るのだろうかという不安感も膨らんでいました。また最初に同行するチームの調査対象が海氷であることは分かっていても、いったいどういう方法で調べるのかということまでは分かりませんでした。チームメンバーの塩崎隊員から事前に「ドライスーツを着てもらいます」と聞き、正体不明の不安感は増せども調査の理解が進まないまま、当日を迎えてしまいました。そしてその不安は見事的中するのでした。
搭乗時にまず驚いたのが、輸送ヘリコプターCH-101に積載された物資量です。調査メンバー4名と広報隊員が随行する8日分の食料(荒天で停滞した場合の分)を含むものの、ヘリの貨物室には1200kgもの機材物資が山と積まれていました。
広報隊員という立場はある程度尊重して貰えるものの、野営装備や糧食などはチームにお世話になるのですから観測のサポート要員としての役割も当然求められます。「この物資のうちどれだけを海氷上までもっていくのやら」と心中でつぶやき軽く嘆息しますが、自分自身が野外調査する際には嬉々として重たい装備を背負って行くのを思い出して「彼らにとってはこの海氷は宝の山なんだ」と思い直し、出来る限り力になれるよう気持ちに喝を入れます(後編に続きます)。
(JARE65 丹保俊哉)