1960年10月10日、第4次隊の福島紳隊員はブリザード※に巻かれ、昭和基地近くで遭難、1968年2月9日に西オングル島で第9次隊によりご遺体が発見されました。この事故は観測隊唯一の死亡事故として受け継がれています。観測隊では例年この時期、福島隊員が見つかった場所を訪ね、慰霊を行っています。64次越冬隊は10月12日から16日にかけて、4グループに分かれて慰霊に行ってきました。
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撮影:JARE64 白野亜実(2023年10月12日)
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撮影:JARE64 白野亜実(2023年10月12日)
福島隊員が発見された場所は、西オングル島の西部にあり、昭和基地からから直線距離で約4.5km離れています。発見場所付近から昭和基地は東北東に見え、ブリザード時の卓越風向と一致することから、福島隊員は強風に押され、その場所にたどり着いたのではないかと想像されます。私たちは今回、雪上車とスノーモービルで慰霊に訪れましたが、視界のほとんどない悪天候のなか長い距離をどのような思いで歩いたのだろうと思うとやり切れません。
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撮影:JARE64 白野亜実(2023年10月12日)
この事故を教訓に、荒天時に建物間を安全に移動するためのライフロープを延伸するなど、観測隊では様々な安全対策を施してきました。今では、ブリザード対策指針を定め、ブリザード襲来時には越冬隊長が外出の危険性を総合的に判断し、外出禁止令や外出注意令を発令します。福島隊員の事故以来、60年以上に渡って観測隊で死亡事故は起こっていませんが、厳しい自然環境の中で危険と隣り合わせで活動していることを忘れてはいけません。福島隊員の冥福を祈るとともに、越冬終了まで安全第一を心がけることを改めて誓う機会となりました。
(JARE64 白野亜実)
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撮影:JARE64 白野亜実(2023年10月12日)
※ブリザード…発達した低気圧などにより強風を伴う降雪の天気