10月の訪れ

10月に入り、日差しが日ごと強くなってきました。1日中太陽の昇らない極夜の時期がずいぶん前のように、そして私たち観測隊の繁忙期である南極の夏が近づいていることを感じます。

大陸沿岸から舞い上がる雪煙
撮影:JARE64 塩原大晟(2023年10月9日)

9日朝、「南極大陸から湯気が出ている!」という隊員の声で、東側の大陸を眺めると大陸沿岸から雪煙が上がり、まるで湯気のように空に立ち上っている様子がみられました。「ハイドロリックジャンプ」という現象で、大陸上で冷やされた空気が斜面を勢いよく吹き降ろし、沿岸で流れの緩やかな空気とぶつかって跳ね上がり、雪煙が見られる現象です。この日、昭和基地から東に約20kmに位置する大陸上の観測拠点「S17」では20m/s前後の強風が吹いており、もし自分自身が大陸上に居て、地吹雪や雪煙に巻かれていたらと思うと少しぞっとしました。

昭和基地から見えたハイドロリックジャンプ
撮影:JARE64 白野亜実(2023年10月9日)

10日朝の昭和基地周辺は風も弱く晴天に恵まれ、9月に引き続き6名の隊員たちが大陸上の観測拠点「S16」へ出かけました。今年11月中頃に出発予定の内陸調査旅行チームが使用する燃料や大型雪上車を「S16」に一時保管したり、橇(そり)など装備の準備を目的とした宿泊を伴う野外行動です。この日の昭和基地の日の出は朝4時48分で、朝7時半の野外行動チーム出発時にはすでに日が高く昇っていました。

内陸調査旅行用の大型雪上車を含め、計6台の雪上車で出発する野外行動チーム
撮影:JARE64 白野亜実(2023年10月10日)
太陽が照りつける北の浦の海氷に向かって出発していく野外行動チーム
撮影:JARE64 白野亜実(2023年10月10日)

私たち64次越冬隊が昭和基地に滞在できる期間も残り約4ヵ月となりました。これから次隊到着までにやるべき作業や自身の南極でやり残していることを思うと私も頭から湯気が出そうですが、眼前に広がる景色を眺めてクールダウンし、1日1日を大切に楽しんで仕事に邁進しようと改めて思いました。

(JARE64 白野亜実)

昭和基地主要部の夕暮れ 夜20時半ごろ撮影
撮影:JARE64 白野亜実(2023年10月10日)