南極大陸上での観測機器のメンテナンス作業

9月12日〜13日に1泊2日で南極大陸上の「S17」地点での気象観測と「S19」でのGNSS(衛星測位システム)観測※のために設置されている2つの観測機器のメンテナンスに行ってきました。S17地点での気象観測のデータはDROMLANと呼ばれる東南極の各基地を航空機で結ぶ国際共同事業にも役立てられており、年間を通しての定期的なメンテナンスが必要です。S19地点でのGNSS観測では氷河・氷床の流動や高さの変化を観測しています。
S17地点の観測機器のメンテナンス作業では、風速10メートルの地ふぶきの中、測定機器の交換や精度確認を行いました。屋外での作業は油断するとすぐに体が冷え、瞬く間に指先の感覚がなくなってしまうため、適宜暖かい雪上車の中で休憩をはさみながら行いました。また、細かい部品を雪面に落とすと雪に埋もれて見失ってしまいます。南極での作業はネジ1つ取り付けるのも一苦労です。

S17における気象観測装置メンテナンスの様子
撮影:JARE64 大山まど薫(2023年9月13日)

S19地点は今年の2月に訪れた時に比べて積雪が約75cm増え、観測機器が全て雪に埋まっていました。そのため、観測機器の場所の特定は難しかったですが、無事見つけることができました。1日目は埋まったアンテナと観測機器の掘り出し及び現在地点の座標データを取得するための観測を行いました。2日目はその座標データの回収と新しいアンテナを用いたGNSS観測を開始してきました。これまでの観測から、S19地点はフラッツンガ氷河の上流域にあたり、宿泊していた「S16」地点に比べて氷河の流動速度が速いことがわかっています。今回の野外行動により、前回2月初旬に設置してから約40日間分の観測データを取得できたため、これからの解析結果が楽しみです。

S19地点到着時の様子。観測機材は全て雪の下に埋まっていた。
撮影:JARE64 瓢子俊太郎(2023年9月12日)
S19地点で再設置したGNSS観測機器
撮影:JARE64 瓢子俊太郎(2023年9月13日)

無事に2つの観測機器のメンテナンスを終えることができ、安心しました。南極という厳しい環境下では、野外行動は予定通り進まないことが多いのですが、今回は天気に恵まれるとともに、チームの全員が臨機応変に作業を進めてくれたおかげで任務を完遂できました。引き続き観測に尽力して行こうと思います。

 (JARE64 瓢子 俊太郎・大山 まど薫)

GNSS観測…GNSSとは衛星測位システム(Global Navigation Satellite System)と表され、GNSS衛星から発せられる信号を受けて観測点の位置を測る。